第87話 出戻り

 イデアさんの屋敷を出た後、俺達の屋敷に戻る頃にはアイリーンの機嫌は直っていた。生理が始まりでもしたのだろうか?妻は生理中はずっと機嫌が悪かった。


「なあアイリーン、俺気が付かなくて悪かった。さっきから様子が少し変だったから気が付いたけど、今まで気付いてあげられなくて悪かったな」


「えっ?何の事ですか?」


「女の子の日になったんだろ?亡くなった妻もそうなるとずっと機嫌が悪かったからさ。ごめんな。一言言ってくれたら出掛けるのを明日にしたのに」


 アイリーンは真っ赤である。


「ち、違いますもん!3日前に終わりましたから!あっ!」


「ち、違ったのか・・・」  


「レオン、その女の子の日ってなんだい?」


「ほら、女性特有の月の物だよ。つまり生理の事だよ」


「へー!異世界ではそんな言い回しが有るんだな」


「こっちではなんと言うんだ?」


「赤の日だよ。血が出て赤くなるからね」


「もう!レオンのバカ!」


 アイリーンはスタスタと屋敷に入っていった。


「なあ、アイリーンはどうしたんだ?」


「高々生理だぜ。冒険者は仲間に言わなきゃだからな。アタイはそれが嫌だからパーティーを組まなかったんだ。それよりも他に何か怒らすような事をしたんじゃ?」


「何やったんだろうな・・・俺。って生理中の事って高々って言う割に、仲間に言うのが嫌って?」


「アタイは呪いの所為で生理が来ないからさ。たははは。その、なんだ、呪いを解かなきゃ妊娠出来ないんだがな」


「何でそんな事になったんだ?」


「剣聖のスキルを得た時にちょっとね。ほら、エンピアル達が呼んでいるぞ!入ろうぜ」


 ニーナに言われてから屋敷を見ると、エンピアル達4人が玄関先に見えるので、話を切り上げて屋敷に入る。


 エンピアルには冒険者ギルドに行く予定だからと、城で手に入れた女性用の冒険者が着るような服を置いていたのだが、それを着ていた。他の3人は町娘が着るような服を着ていた。


 どうやらアイリーンが呼んできたようだ。


 セバスチャンも出迎えてきたので、これからエンピアルを伴って冒険者ギルドに行き、その後食事をしてから帰るが、遅くなる可能性があるから、食事は俺達の帰りを待たずに開始するように指示を出した。


「エンピアル、出掛ける準備は良いか?って履き物はそれしかないか」


 サンダルにしか見えないのを履いていたのだ。


「申し訳有りません。冒険者活動をするような靴の持ち合わせが御座いません。それと、その、私は他の人より足が大きいようで、出していただいた靴もサイズが合わなかったもので・・・」


「いや、謝る事は無いさ。じゃあ、靴を買ってから行こうか。これは必要な物だから申し訳なさそうにはするなよ」


 コクコクと頷く。


「ようし、ニーナ、店に案内を宜しくな!」


 そうして靴を買いに行き、4人共新たに戦闘用や野外活動に耐えられそうな靴をオーダーした。また、エンピアルには取り敢えず、これから冒険者ギルドに行くのに浮かないような靴を買い、履き替えてからギルドに向かったのだった。

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