前のエピソード――第82話　ニーナがいた

　明日の事について３人で話し合っていた。

「ニーナ、帰るのが早かったけど、師匠にはちゃんと報告をしたの？」

「それがな、隣町に行っていて留守だったよ。明日の朝帰ってくるって言ってたな」

「じゃあ時間を見計らって伺うか？近いんだっけ？」

「３軒離れているだけだぞ」

「近いんだね。じゃあ、明日の早い時間に先ずはニーナの方で師匠さんに確認して貰った方が良いね。遠かったら３人で向かうんだけど、頼める？」

「ああ。任された。それよりもアタイがあんな良い部屋を使っても良いのかい？」

「当たり前じゃないか。アイリーンはどうだい？」

「はい。素敵なお部屋ですね。綺麗だし、眺めもお庭が見えて中々良いですよね！勿論気に入りました！」

「そうだな。確かに眺めは良いけど、なんでこうなったのかな？気が付けば屋敷を買っているし」

「いいじゃないか！金はあるし！困っている奴らを助けたんだから！」

「ニーナのいう通りですよね！奴隷の女性って、意思に反して好きでも無い者に奉仕しなければならないなんて、酷いですよね！さっきね、エンピアルに聞いたの。彼女ね、間もなく召喚者の女として慰み者にされると言われていて、毎日泣いて過ごしていたって言っていたの。あの人達を救えて良かったと思うの」

「これからのあいつらの事を考えないといけないけど、俺達はアイリーンのクラスメイトを探しに行かないとだから、数日後には町を出ないとな。誰かにあいつらの事を託せたらな。ニーナの師匠に期待しよう」

「みッちゃん達元気かな？」

　そんな話をしていたが、俺が欠伸をしたのでお開きになった。そうして王都に到着してからの初日を終える事になった。

　そして朝になり、エンピアルが裸で俺のベッドに忍び込んでいるようなイベントもなく、残念ながら普通に目覚めた。

　キングサイズのベッドに１人とは贅沢と言えば贅沢だが、この世界に来て初めて１人で寝たのだ。

　有り難い事に、戦闘奴隷達が夜も交代交代で警備をしていた。

　フリオールに聞くと、奴隷商というのは恨みを買ったり、商売敵から逆恨みされる事が多いので屋敷の警護は欠かせないらしい。

　フリオールに昨夜指示をしたのは、屋敷の警護要員以外は俺達がニーナの師匠の所から帰り次第、冒険者ギルドへ冒険者登録をする為に出掛けるので、準備をしておくようにと。

　朝食を終えると俺はニーナに少し剣の稽古をつけて貰ったが、ニーナは呆れていた。余りにも剣を使え無さ過ぎたからだ。

　ニーナは俺の実力から先が長いなとため息をついていた。

　それはともかく、その後ニーナは師匠の所に向かった。

　そして俺はというとひと仕事する事になった。セバスチャンから俺が屋敷にいる間は、毎朝の日課として屋敷で使う魔道具へ魔力チャージをして欲しいと頼まれたのだ。屋敷の地下にあるのだが、この屋敷で使う魔道具の魔力源に魔力を注入する事だ。本来は魔石を使うのだが、俺の魔力の事を聞いて魔石を節約したいと言われたのだ。

　どうやら本来は魔石をセットするそうだが、魔物の魔石はそれなりに値段がするのだ。

　地下には魔石の貯蔵庫もあった。俺が魔力貯蔵用の魔道具に手をかざして、魔力をチャージする様を何人かの女性陣が見ていた。凄い凄いと褒めているのだが、そんな黄色い声が小っ恥ずかしかった。何故か俺が行く所に奴隷となっている女性陣が後をついてくるのだ。

「ごめんあそばせ！」　　

　だが、鼻の下が伸びていたようで、アイリーンに足を踏まれるのであった。