第27話 クマーシャル王国マーリンズの町にて

 ピロリロリイイイーン!アラームと共にふっかあああつう!とはいかないが、急激に背中の痛みが取れ、立てるようになった。流石に魔法が使われたのだという事は理解出来た。魔力が流れてきて、不思議な感覚に見舞われたからだ。何故か流れてきたのが魔力だと理解できたのだ。


「うおぉぉ!凄いなこれ!アイリーン、痛みが全くしないし、肩も回るよ!ありがとう!」  


 アイリーンは泣いていた。ごめんなさい、ごめんなさいと謝りながら。


 そんな中、俺の治療をしてくれた治療師の女性が告げてきた。


「治ったんなら金を払ってとっとと帰るんだな。そろそろ店を閉めるところなんだよ」


「あっはい。えっと、おいくらで?」


「そこに書いてあるだろ?」


 俺達は顔を見合わせてハハハと苦笑した。その女性は20代半ば位で、白衣を着ていた。燃えるような赤髪で肩までの長さだ。身長はアイリーンより少し小さい。気の強そうなお姉さんタイプで、綺麗な顔をしている。この女性だけ他のスタッフと違い、スカートの丈が妙に短いのは気の所為だろうか?


「っち!そんな身なりなのに読めないのかい」


 明らかに嫌そうな顔をした。


「金貨5枚だよ」


 他のスタッフが何やら言いたげだった。


 俺は懐から財布を出す振りをして、収納から財布を出し、手に握った金貨を渡した。


「お蔭で助かりました。これ、お代です」


「あんたら2人してお人好しか世間知らずだろう?」


「えっ?」


「刺し傷や切り傷の治療は金貨1枚だよ。アタイが嘘を言ったのを鵜呑みにしたろう?」


「やはりそうですか。眉がピクッとなったから何かあるのかなとは思ったのですが、まあ女の前で値切るものじゃないですからね。それに俺にとってはそれだけの対価を払う価値がありましたから。本当に助かりました。それはそのままで良いですよ」


 その女性はバツが悪そうに頭をかいていた。


「はぁ。あんたら今日町に来たんだろ?宿とか決まったのかい?」


「まあ、そうですね。勿論これから宿を探しますよ」


「しゃあないねぇ。アタイが案内してやるよ。この後予定とかあるのかい?」


「いえ。宿を探して、そこで食事をして寝るだけですよ」


「あんたらって見ていて危なっかしいし、カードに夫婦とあるけど、なんでその子はまだ生娘のままなんだい?」


 アイリーンがつい、何故判ったの?といった顔をしてしまった。


「訳ありかい?良かったら話をしてみないかい?」


「それでは夕食を食べながらでどうですか?」


「よし、外で待ってな。勝手にどこかにいくんじゃないよ!逃げたらとっ捕まえて頭を叩いてやるからな!」


 そうして俺達はこの押しの強いお姉さんを待つ事になった。


「あのう、レオン?どうしよう?」


「悪い人じゃないと思うけど、俺達は色々バレバレなんだろうなあ。さっきの夫婦じゃないというのもカマを掛けたんだと思うし、俺達はそれに対処ができなかったから顔に出たんだよね。それに俺より君の事を放っておけないって感じだよね。国を越えたし、話位付き合ってやろうよ。俺達も情報が必要だし」


 そうして俺達は治療してくれた女性が出てくるのを大人しく待つ事にしたが、5分位待っていると赤髪の女性が普段着?で現れた。

 スカートはそのままのミニスカで、白衣を脱いだだけのようだ。

 服の上はお腹丸出しで、かなりセクシーなブラをしており、その上に気持ち程度で長袖シャツかブラウスのようなのを羽織るだけで、前は止めていない。なので胸元が強調され、谷間がはっきり分かる。水着としか思えず、ここが海水浴場やプールなら違和感がないが、俺は、いや、アイリーンもつい胸元に目が行ってしまう。


「おっ!感心感心、逃げずにちゃんといたんだね!」


「逃げるって!?」


「あんたらからそういう匂いがするんだよ。門番と来たから犯罪者ではないのだろうけどさ。取り敢えずお勧めの宿に行こうか」


 そうしてこの不思議な押しの強いお姉さんと宿に向かうのであった。

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