第14話 配慮不足
ギルドを出ると、アイリーンが慌ててレオンの裾を引っ張って人気のない所に連れて行った。
「さっきはごめんなさい。私、嫌な子でしたよね?」
「確かに少し変だったけど、俺って又何かやっちゃったかな?」
「違うの。そのね、とちじゃなくて、レオンがね、あの受付の方に取られるんじゃないかって思ったの。私って馬鹿ですよね。そんな訳がある筈ないのに」
レオンはしまったと思った。精神的にも肉体的にも追い込まれているのは想像に難くない。なのについ受付嬢に見惚れてしまった。彼女からすれば、今生きる術は俺しかないのに、軽率な行動だったと反省した。さっきの夫婦というのも、そこから来たのだろう。ここは大人の自分が、大人の対応をする時だと悟った。
「ごめんね。配慮が足りなかった。さっきの女性に見惚れたのは猫耳にだよ。なんか触りたくならない?それ以上でもそれ以下でもないから。アイリーンがちゃんと1人で生きていけると確信出来るか、クラスメイトと再会して、俺抜きでやっていける算段がつく迄はアイリーンの側を離れないよ。こっちで恋人を作るとしても帰れないと確信するか、その時以降かな。だから今はアイリーンの夫を演じるから、心配しないで」
「私の元を離れちゃうの?ずっと一緒にいて欲しいよ」
「先の事までは分からないよ。もし意図せずにお兄さんと離れ離れになったり、先に死んじゃうかも分からないよね。だからアイリーンには例え1人になっても生きられるようにしたいとは思うけど、あくまでも不測の事態を考慮してだから心配しなくても良いよ。よし、疲れたから宿に行って休もう」
アイリーンは納得したような、しないような感じだった。
宿はすぐに分かった。識字率が低いのか、大抵の店にはどのような種類の店なのかが分かる看板が掲げられていた。宿はベッドが描かれているのと、大抵は食堂か酒場を兼ねているから看板が2つあるようだ。
ジョッキ+皿とフォークで酒場、皿とフォークのみで食堂だと教えられた。
ようやく町並みに対して目を向ける余裕が出てきた。
やはり中世のヨーロッパを彷彿とさせる町並みで、文明レベルは高くなさそうだ。1階が店舗で、2階が住居だろうか。恐らくうなぎの寝床状態だ。間口は幅が狭いので縦に長細く、貴重な通り沿いに1軒でも多く店を構える為に縦長の構造なのだろうと思うのだ。
「と、じゃなくて、レオン、小説とかで出てくる町ってこうなのね。でもやっぱりリアルと空想だと違いますよね」
「どんなところ?」
「匂いかなぁ?ほら、小説とかじゃあまり伝わってこないじゃないですか?女の人の香水とか、空気の匂い、果物や食べ物の匂い。それにやっぱり服とか肌の色を見て、違う世界に来たんだなぁって思ったんです」
「だね。それじゃあ宿で腹ごしらえをして、休もうか」
「はい!」
そうして2人は宿の扉を開くのであった。
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