第2話 説明
意味が分からないのですが、どうやら私達はお城の中にいるらしいです。槍を持ち、甲冑を着込んだ兵士?がこのホール?の外周を囲んでいて、おっさんや高校生達がいる周りを神官服?を着た男女が囲んでいるんだよね。これって、もしかして?・・・
「成功ね!」
「今回は人数通りだな」
等と聞こえるが、1人の男子生徒が叫んだ。
「異世界転移キターーー!」
なるほどねと思ったけど、先程の女子高生に抱き着かれている。
怖かったのか震えており、周りも騒然となっていて、女生徒の何人かの泣き声が聞こえて来る。
俺は周りをそれとなく確認し、抱き着いている女生徒に声を掛けた。
「おっさんは大丈夫そうだけど、君は大丈夫?」
俺の声が何か違う?違和感があったが、女の子も落ち着いたようで返答してきた。
「あれっ!?さっきぶつかったおじさんじゃない?」
「えっ!?さっきぶつかっちゃったおっさんだよ?」
「うん。荷物や服はそうなんだけど、まさかおじさんって若返ったりした?」
そうして彼女は胸元から出した手鏡を俺に向けてきた。
「えっ?何これ?おっさんじゃなく、若い男の子が見えるんですけど?」
俺がそう唸った次の瞬間、ズボンがずり落ちた。
「キャッ!お兄さんのズボンが!」
俺は慌ててズボンをたくし上げたが、ユルユルだった。
取り敢えずベルトを1番緩いところから、1番きついところに絞ったところ何とかなったが、ベルトが長いので後で少しカットしたい。歩くのはなんとか大丈夫そうだが、それでも少し緩い。
「ねぇ君、おっさんはどう見える?」
「さっきのおじさんに似た、私と同い歳位の男の子・・・かな?」
「やっぱりそうだよね・・・おっさん、お兄さんになった?」
「やっぱりさっきのおじさんですよね?」
「そうだね。ちぃとおかしな事態になっているから、おじさん改め、お兄さんから離れないで。えっと、俺は杉浦 栃朗です」
「あっはい。私は宮條 瑞希(くじょう みずき)です。おじさんじゃなくて、お兄さん?それとも栃朗さん?どちらかでいいですか?随分落ち着いているんですね?」
彼女は目が細く、一見すると冷たく見えるクールビューティーだ。良い所のお嬢さん?なのかな?こんな美少女はテレビや雑誌でしか見た事がないぞ!
「栃朗で良いよ。じゃあ瑞希さんで良いかな?年の功でね。人間慌てたらそこで終わりなんだよ。どうも悪意を感じられるんだ。表情とかにも滲み出ているしね。一部の者には憐れみの表情が見られるから、この後碌な事が無いと思うんだ。えっと、この中に恋人とかいるのかい?」
「いえ。特定の人はずっといないですけど?」
「うん。君ともう1人位なら何とかしたいと思ってね。それ以上は無理かな。多少武術に心得が有るけど、悪いけど、他の人の事に迄は手が回らないよ。君だけなら何とかなるかもだけど」
彼女はおっさんの腕をギュッと握ってきたよ。
彼女はセーラー服なので、走ったりするのは無理そうだ。武器になりそうなのは・・・三脚位しかないか。
カーボン製の三脚で雲台が中々重いが、武器として持つとしたら雲台側かな。
兵士達は高校生達が落ち着くのを待っていたようで、高校生達を取り囲んでいる中の誰かが大きな声で喋り出した。
壇上に何人かいて、その中の1人のおっさんが仰々しく話し始めたのだ。
「皆様ご静粛に!ようこそアーリバン王国へ。これから王女様より説明がございます」
「瑞希さん、目立たないように観察するんだ。どうも胡散臭いな」
1人の若い女性が1歩前に出た。
ドレスを纏い、いかにも高貴な感じがする。かなり整った顔立ちで、見事な金髪のロングヘアーだ。
その姿を見た一部の高校生達は浮足立っており、何人かが唸っていた。
ほう、瑞希ちゃんと良い勝負が出来る位の顔面偏差値だな。つまり美人さんだ。
「すげぇ!お姫様だ!」
「わー!綺麗なひとね!」
「胸デケエェ!、てかっ、谷間が見えそうだぞ!」
「ポロリしないかな?」
王女は片手を上げた。
「この度は突然の召喚に応じて頂きありがとうございます!私はアーリバン王国第2王女のカーラです」
いや、応じていないよ?こちらの意思に反して連れて来たんだよ?誘拐だよ?と俺は心の中で唸るが、瑞希ちゃんは俺の腕をギュッと掴む。
ちょっと腕が痛いかなー!ってそれだけ不安なんだよね?何か守ってあげたくなる!
「皆様方は我々が召喚致しました。分かりやすく言いますと、異世界召喚を致しました。先ずはこちらの話を聞いて頂きたいですわ。疑問を感じられる事の殆どをお話致します!私が話した後、時間を取って質問をお聞き致しますので、先ずはそのまま聞いてください」
皆を一度見渡した。
「先ずこの世界での勇者様方の死は、本当の死では有りません。死んでしまった場合、霧散して元の世界の、そう、召喚された時点に戻ります。最後の者が戻った時点で全員夢でも見ていたのかといった感じになります。その時は混乱していますが、こちらの世界で過ごした記憶はちゃんと有ります。最終目的は魔王討伐です。又はそれに類似する災厄への対処。これよりスキル付与の儀式にて皆様には素質に合った特殊なスキルを2つ選んで頂きます。志し半ばで死んだ場合やリタイアして返送の儀にて送り返す方は、そのスキルのうち、片方を持って帰る事が可能です。次に魔王討伐時に戦闘に参加せずに生き延びた場合、返送の儀にて送り返しますが、スキルを2つ共持ち帰る事が可能です。そして討伐に貢献の有った方は、それ以外のスキルのうち、新たに取得したスキルを1つ追加で持ち帰る事が可能です。成長すれば新たなスキルを得られます。これが皆様へのお詫びと報酬です。物理的な物は皆様方が召喚された時にお待ちの荷物のままで戻るので、新たな物は持ち帰る事が叶いません。今の荷物に宝石を忍ばせても、その場に宝石が残ってしまいますので。詳しくはこの後にお話し致しますが、女性の方に朗報があります。もしこちらの世界で男性と体の関係を持って処女性をなくしても、日本に戻れば処女に戻ります。ただ、皆様方お気を付けください。子をなした場合、その子は連れ帰る事は叶いません。忘れ形見にしかならず、女性の場合、帰還した時に体自体は出産経験が無かった事になります。基本的な事として、皆様のいた世界にはいない魔物と言うのがいます。動物とはまた違い、魔力を元にして作られし生命体で、人類の敵となります。皆様方には魔物を倒して頂きます」
皆ざわめいた。ある意味凄い事になる。性に興味のある年齢だ。
事実だとすれば例え羽目を外したとしても、日本に帰れば実体験としての記憶はあるが、体にはその痕跡が残らないし、無かった事になるので皆色めき立っている。
そんな都合の良い話がある訳が無いのだが、今この異世界召喚という異常事態に信じる者がおり、誰かがスゲーぞ!と信じたかのように叫ぶと、釣られて皆信じてしまうような集団心理が働いてしまった。
そして栃郎と瑞希だけは見逃さなかった。王女と言われるこの女の顔が一瞬どす黒く、フッ!と言うように口角が上がったのを。
「信じるなよ。あいつの顔が一瞬歪んだ。しかも慣れているぞ。異世界召喚という言葉や俺達の国名を言ったからな」
「はい。私も背筋に寒気が走りました。怖いです」
「質問はありませんか?勿論後からでも大丈夫です。先ずはあちらにてスキルを選んで下さい。1人ずつになりますが、選んでいる時間は数時間であっても、実際は数秒です。それとこの首輪をして頂きます。この世界では皆様はこれを装着しないでスキルを使われますと、10回に1度程度ですが、スキルが暴走して死に至りますので、制御の首輪を装着して頂きます。しかも爆発して周りを巻き込んでしまいますので宜しくお願い申し上げます。それではこちらに」
そうして隣の部屋に移動するのであった。
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