第4話
「そんなバカな……」
天を仰いだカイジンは泡を吹いて、気を失いました。
「セバス、縄を」
「はいっ」
ウィン王子の命令で、セバスと呼ばれた執事が私の縄を解いてくれる。逃げるチャンスだと思いつつも、私はカードの状況が気になって、急いでテーブルの上に行く。セバスは私を止めようとはしなかったけれど、私と何かがつながっているのではないかというくらい同じスピードで私の半歩右後ろを付いてきた。
テーブルを見ると、カイジンの手札は散らかっていて、裏返ったカードもあったけれど、表をめくって、整えて確認してみる。すると、スペードのジャック、ダイヤのジャック、クローバーのジャック、そしてジョーカーとスペードの3があった。ジョーカーはどのカードの代わりにでもなれるから、ハートのジャックの代わりにして、フォーカードを宣言したのだろう。
それに対して、王子の手札は、ハートのA、ハートの2、ハートの3、ハートの4、ハートの5の綺麗に置かれていた。ストレートフラッシュは奇跡に近いとお父様に聞いたことがあったので、ウィン王子の強運にびっくりして、思わず、ウィン王子の顔を見た。
「これで、ボクはキミを助けられる立場になった」
ニコっと清々しい顔で笑うウィン王子。だけど、あまりに清々し過ぎて、私は怖くなった。
「助けて……いただけるのでしょうか?」
ウィン王子の返答次第では逃げなければ。
とはいえ、セバスの追跡能力を見たら、できる可能性は限りなく低い。でも、
(私をモノ扱いする人となんかといられない)
王家は国民をコマにしか思っていないのかもしれないし、王家に尽くすのが、国民の義務だと思っているだろう。他の国から守ってもらっているのだし、王家の御旗の元、国民がみんなで一致団結することは必要というのはわかっている。けど、この心、恋心だけは、誰にも渡したくない。それが、子どもっぽいと言われても、カイジンに騙されてしまったとしても、全ては自己責任でいたい。選んでしまったことは後悔すべきことだけれど、それをバネに次こそ真実の愛を手に入れたいのだから。
「ルールはルールだ。キミの婚約者がキミを賭けて、そして、負けた」
「でも、婚約者です。心も身体もこの人の捧げてはいません」
そう、カイジンは私のことを「ツレ」なんて言っていたが、結婚することを約束した状態で、結婚ではないのだから、私は自分の人生を彼に捧げていない。見苦しい言い訳と思われるかもしれないが、間違ったことは言っていないはずだ。
「いいだろう。じゃあ、こうしようじゃないか。キミがポーカーをする。そして、勝ったらキミの自由だ」
ウィン王子はすぐに了承してくれた。ウィン王子は頭の回転が速いのか、それとも何か裏があるのか……。
ニコッ
(うううっ)
ウィン王子の笑顔からは何も読み取れなかった。逆に私の全てを見透かされそうでそわそわしてしまった。ウィン王子は表情豊かだ。さっきまでカイジンとポーカーをしていたときや、セバスを見た時は冷めた顔をして、今は笑顔。状況状況で表情が変わるのだけれど、心の内が読み取らせないウィン王子の顔はポーカーフェイス見え、ポーカーの腕も強いのがうかがえた。
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