第2話

「なっなりませぬ」


 王宮に入った太陽神と私。

 屈強な兵士が複数人止めようとしても、石膏像のモデルになりそうな均整の取れた筋肉の太陽神を止めることができない。


 太陽神を止めることができる唯一の存在・・・それは。


「どうかなさいました?」


 前を歩く太陽神が自ら立ち止まったので、私は太陽神の顔を見て尋ねると、


「いや、ここからは俺のみで行く。案内ご苦労。祭りでも楽しんでくるがいい」


 私に話しかける太陽神の顔は珍しく優しい顔をしていましたが、その前に怒った顔をしていたのを私は見逃しませんでした。


「いいえ、今日は年に一度の白夜祭。今日一日は私は太陽神様から離れてはならぬお約束でしょう?」


 ずーっと一緒にいたい、と仰った太陽神。私もそう思っていたけれど、それは人として望んではいけないことだと思った私はその願いを断った。いつも自信に溢れていた凛々しい太陽神の顔が物寂しげで、その顔がほっとけなくて、私は子供であったと言え、失礼にも上から目線で「太陽神様と1年に一度は一緒に居てあげます」とお伝えしましました。そうしたら、太陽神は「ではその一日は片時も離れるな」とおっしゃいながら、私の頭を撫でて私を抱きしめました。その時の太陽神の無邪気で一片の穢れもない満面の笑みは最高の笑みだと私は思っていて、その言葉と共に私は心に大切な思い出としてしまってありました。


「では、その約束は無しでよい。さぁ、行け」


 約束が・・・無し?

 

 私の大切な思い出。

 それが、こんな簡単に終わって言い訳ありません。私は悲しくなったので、意地になり、


「いいえ、行きません」


 私は太陽神の腕に抱き着いてやりました。

 すると、周りにいた兵士が慌てます。当然です、だって私は王子が婚約者で、兵士たちは王子に仕えているのですから。兵士たちの視線に気づいた太陽神。自由な少年のような御方ですが、神ですから兵士たちの様子で意味を察した様子でした。


「頼む・・・」


 私も、兵士たちもびっくりしました。

 あの太陽神が頭を下げたのです。


「なぜ・・・ですか?」


 そうまでして、私と一緒にいたくないのですか。

 私は涙で少し視界がぼんやりとしましたが、涙がこぼれ落ちないように必死に堪えました。太陽神は何かを考えていらっしゃるのか私の顔を見つめました。そして、重い口を開き、


「俺に付いてくると言うことは、過酷な道かもしれぬぞ?」


 太陽神は何を心配されているのでしょう。

 ですが、


「どんな道でもお供致しますわ。だって、今日は白夜の日ですから」


「・・・わかった。ただ・・・腕を抱きしめるのは止めてくれまいか? あっ、いや。嫌なわけではないんだが」


 照れる太陽神は可愛らしい。


「そうですね、失礼いたしました」


 私ももう大人。婚約までして気持ちが揺らぐことも無く、さきほどまでの幼き頃に抱いた心に鍵を閉めて、太陽神の横を歩きました。

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