婚約破棄するのはいいですが、太陽神に溺愛される私を国外追放するのは知りませんよ?
西東友一
第1話
今日は年に一度の白夜祭。
一日を通じて日が沈まない。
人々は太陽神に感謝し、祭で賑わう。
「うむ。やはり美しい」
でも、今日を一番楽しんでいるのは目の前にいる太陽神でしょう。
金でできた装飾品にも負けない美しい顔立ち。そんな方に美しいと言われると前髪が整っているか気になって弄ってしまう。
「お話があります」
「おう、とうとう花嫁になる覚悟ができたか」
「・・・・・・」
顔をくしゃっとさせて笑う太陽神に告げるのは、心が痛んだけれど、私は言わなければなりません。
「私、婚約者ができました」
私がそう告げると、太陽神は持っていた食べかけの果実を落として、ぽかんと口を開けていらっしゃいました。
「・・・俺たちはいつの間に婚約を」
「していません。相手は王子です」
「あんな小便タレをかっ」
「それは、昔の話です」
太陽神は私の成長に関しては物凄く興味があるけれど、他の人間のことなんてほとんど興味がない。だからか、太陽神が来たらまずもてなしている王家の人間であっても国王や王子の名前もすぐに間違える。
「だから、俺はこの国にずーっといたいと言ったのだ。クソが。あんな青二才に寝とられただとっ」
「いえ、まだ婚約中なので王子とは寝ていま・・・」
ちらっと太陽神を見たら、太陽神がホッとした顔をしている。その顔を見たら少し気恥ずかしくなり、目を逸らしました。
「それに、太陽神様がこの国にずーっと滞在したら、作物は育ちませんし、夜もゆっくり寝れません」
太陽神様は自信に満ち溢れ、凛々しく自由なところが素敵だと感じることもあり、幼い頃は「太陽神様と結婚するっ」と言ったこともあり、そう言った時は太陽神様はたいそうお喜びになりましたが、両親を含めた国民全員から反対にあい、大人の全員がそういうのであれば間違いないと思った私は、それは悪いことだと思うようになり、人として神様に接するように心がけて参りました。
逆に王子に見初められた時は、一部の女性を除き、両親を中心に仲が良い人たちは皆、素晴らしいこと、幸せなことだとおっしゃいました。皆が幸せになることをどうして私が拒むでしょうか。私は王子の婚約に応じました。
「なぜ、そんな大事な話をするのに、お前の婚約者はおらんのだ?」
「それは・・・・・・今日はお祭りですので。お忙しいとおっしゃっておりました」
昔、太陽神がうじうじしていた王子に「お前はこの国の長になるのだろっ。しゃっきとせいっ」と大きめの声で言うと、王子はお漏らしをしてしまったのだ。それ以降、王子は太陽神様を避け気味でいらっしゃるようだ。
「ふっ。俺ならお前ひとりに酷なことをさせるなんてありえんぞ」
そう言って、太陽神は立ち上がりマントを付ける。
「さっ、行くぞ」
そう言って私に手を差し出してくる太陽神。
「どこへ・・・?」
「もちろん、王子のところだ」
楽しそうな顔をする太陽神。
めでたい白夜祭、何もトラブルがなければいいのだけれど…。
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