禍電シリーズ

霧沢夜深

第1話 葬除機

 うち来るの久しぶりだよな。まあくつろげよ。

 え、埃っぽい? ……ああ、ちょっと最近掃除できてなくて。窓開けるわ。

 いや、前はこまめにしてたよ。ほら、俺けっこう綺麗好きじゃん。

 なんで今はしてないのって……する? その話。


 ……掃除機さ、あったんだよ。うん、今はもうないんだけど。

 掃除するときはそれ使ってたんだけど、それが急に全然吸い込まなくなったんだよね。

 壊れたとかそんな感じじゃなくて、なんか詰まってるみたいだったんだよ。

 俺、あれ? って思って。だってゴミ取りパック交換したばっかりだったからさ。まだ全然ゴミ溜まってないはずなんだよ。

 おかしいなって。なんか変なもん吸い込んじゃったのかなって思ってパックを確認したのね。


 ……ぎっちり詰まってた。塊だよ。髪の毛の。


 俺のな訳ねえだろ。一人暮らしだし、その髪、長かったし……

 うん。多分女の髪だと思う。それも量的に多分一人分じゃないんだよね、二人、三人、もっとかも……


 いやすぐ捨てたよ。掃除機ごと。え、捨てていいだろ。

 お祓い? いやだってこの部屋事故物件とかじゃねえし。

 じゃあなんなんだって聞かれたら、まあそうなんだけど……


 そんなわけでさ、ちょっとトラウマでまだ新しい掃除機買えてないんだよね。

 ま、ゆっくりしてってよ。なんか飲む?

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