6 ピンク頭の条件

 息子は普通ならそうそう彼女達と縁など持てない。

 何たって向こうは上位貴族のトップにあたる。

 うちはと言えば、中堅男爵家に過ぎない。

 だがうちは歴史学者男爵夫妻、ということで知られている。

 そして私が先代の王太子の婚約破棄事件の被害者であることが、彼女達にも関心を持たせた。

 出たところで「それ」であるかどうかは判らないので、とりあえずはこう注意した。


「その男爵令嬢が殿下に接近することをできるだけ阻止できないでしょうか?」

「無論、できるだけのことは致します」


 アリエッタ嬢はきっぱりと言った。


「私の時は、本当に油断していたのよ。まさか王太子ともあろう方が、そんなに簡単に男爵令嬢の色仕掛けに落ちて、あげくの果てが婚約破棄なんてことを言い出して」

「そんなことをなさったら、継承権どころか王族で居られるかも怪しい、なんてこと判りきっているはずですわ! 何故先代の王太子殿下はそんなことを」

「そこが判りづらかったので、私は色々調べてみたのよ」


 我が国の記録。

 近隣諸国の記録。

 そして遠方の民族の伝説。

 海に浮かぶ諸島連合の記録。

 どんどん範囲を広げていった。

 すると頻度はともかく大概のところでピンク頭の存在が発見された。


「ピンクとまで言わなくとも、薄紅とか薔薇色とか、ともかく言われ方は色々なのだけど、条件は揃っているの」


 1.ピンク頭であること


「これはともかく共通しているの。でも、赤毛はともかくその色はちょっと自然ではない気がしない?」

「確かにそうですわ。だからこそ入学すると目立つのですね」


 2.出没時にだいたい十五歳くらい


「何故十五歳なんでしょう?」

「判らないわ。それはそれこそ当人にでも聞かないと」


 3.身分は高すぎない


「うちの国なら男爵令嬢くらい、ということなのよ。これが他の国で、後宮を持つ様なところだったら、中の下くらいの女官か見習いだったりするの。遊牧民族とかの場合は、必ずしもそうではないのだけど、大概それでも族長と遠からずくらいの位置の者の元に居るのね」

「徹底していますね」


 4.その国の王族ないしは実権を握っている者の後継者に近づく。


「後継者、なんですか?」

「ええ。既に配偶者が居る時には絶対に手を出さない。それが次の条件ね」


 5.婚約者が存在する者に限定される


「なるほど」


 6.そのまま無視されれば通り過ぎる

 7.婚約破棄が成功したら消える


「これは一体どういうことですか?」 

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