美少女5人組〜この腐れきった学園は我々裏生徒会が仕切ります〜

つっこちゃん

第1話 プロローグ


裏生徒会の掟

1いかなる時も寛容であること

2唯一無二の少女であること

3誰しもが、心地よいと思える学園を目指すこと



ある日のこと、そうこの日は特に見惚れてしまうほど綺麗な満月の夜だった。

夜も更け無意識に携帯をいじりながら下校するのは、今年で17になる1人の男子高校生である。


僕は恍惚としていた。

振り返った空の先に満月があるから、というわけではない。


初めての経験だったのだ。一目惚れをするということが。


生まれてこの方徹頭徹尾、周りの人間からは凡才と言われ続け、他人からの評価を上げるために必死に勉強して入学したとある私立の学園。

合格の吉報を母親に知らせると「さすがうちの子だわ」と今までの態度が一変して初めて笑顔をくれた。


それが存分に嬉しくて、頑張って頑張って頑張って、永遠と続く『苦痛』に耐えてきたが、もう心は疲弊しきって思春期の男の子らしい感情も消えようとしていたある時。

僕は突如として現れた美少女の虜になった。


今思えばあの腐れきった学園で生きる活力を見出してくれたのは彼女だ。

頭の中が悶々として、瞑目すればあの輝かしい時間が蘇り記憶が断片的に映像として変換され再生される。

まるで宝石のように透き通った蒼い瞳、同じ色の腰まで伸びた髪。体型は小柄で指で押してしまえば折れてしまうと思うほど華奢。顔は言うまでもなく美しい。

それ故に美少女。


一目惚れしてしまうのは無理もなかった。

ただ同時に彼女ならば、僕の願いを叶えてくれるんじゃないかとも思った。


美少女は言った。


「アダムが耕しイブが紡いだとき、誰が貴族であったか」


これはイギリスの僧侶ジョンポールが説いた言葉だ。

人間の平等を謳い封建社会を批判し農奴の解放を求めた言葉だが、なぜ彼女の口からその言葉が溢れたのか最初は分からなかった。


何か反応しなくてはと、しかし慌てて言葉を紡ぐにもうまく舌が回らず掠れた空気になって「え……?」としか言えない。


そんな僕を可愛く思ったのか、美少女は小さく口角を上げて続けて言うには。


「この言葉、嫌いなんだよね」


真っ向から僧侶の意思を否定する、残虐な言葉だった。

僕はふと感じた。この美少女もあの連中と一緒なんじゃないかと。でなければ僧侶の、強い権力を持つものに対しての批判の声を否定する意味が見当たらない。


この美少女は敵だ。そう位置付けようとした時、放たれた次の言葉が全てを否定した。


「だって、この学園を言い表してるみたいでさ」


今でも僕は、その時の美少女の顔が忘れられない。もちろん美しいに越したことはない。ただ僕を見つめる蒼い瞳は、強い野望を抱えた怨嗟の炎を宿していたのだ。

だから理解した。美少女の言いたいことが。


さっきの言葉は僧侶の意思を否定して言ったわけじゃない。

なぜあのような言葉を『言わなければならない』のか。批判される環境をつくった者に対しての怒りだったのだ。


どうやら、噂通りの人らしい。





僕は一心に満月を凝視する。

今日は模様、明るさ、全てがはっきりと見えて素晴らしく美しい。


「……裏生徒会。美少女揃いの、僕たち庶民の味方か……」



ーーこれは僕の願いを叶えてくれる、とある団体との物語だ。


彼女たちは美しく、繊細で、頼もしい。


ただ一つ注意点を挙げるならば、権力相手には権力を。といった大規模な騒動が度々起こる事だろう。


毒を以て毒を制する、というのがあの美少女たちの流儀なのだ。

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