1-2 サクラの戦闘
「嬢ちゃん、マジカルガールだったのかよ。ははは! いいね、いいね!」
肌の露出の多い女性は捕まえていた女性から手を離して、サクラに向き直った。手を離された女性はその場から少しだけ離れて、サクラを見守るようだ。彼女が戦ったとしても邪魔になるのは目に見えている。それなら、ミラクルガールに任せようという話で、この町の人はミラクルガールという存在が町を守っていることは知っているが、サクラが正体と言うことは誰も知らない。誰がそうしているのかは、わからないが、戦闘が終わると同時に、サクラがミラクルガールであることと、自分が襲われていたという記憶が無くなるようだ。都合が良いことなのか、悪いことなのか判断はつかないが、今のところサクラ自身は記憶の欠落についてはあまり気にしていないようだ。それよりも人を助けられたことの方が嬉しいらしい。
改めて、女性を掴んでいた肌の露出の多い女性と対峙すると、中々セクシーな服を着ていると彼女は思った。自分にはまだ似合わないなとも考えた。相手の服装はビキニタイプの水着に近い。その上からスケスケの黒く肩や胸の辺りを覆う布を羽織っていた。そして、右手にはひょうたんを持っている。それはこの町を狙う組織のメンバーの一人の部下であることを表していた。
「みずがめの手下ですね。ここで成敗します!」
「やれるもんならやってみろ!」
先に動いたのは相手。地面を蹴り、一息にサクラに近づいた。彼女はそれを読んでいるかのような動きで、横に逸れて相手の拳を躱す。ミラクルガールになったとは言え、武器はないままだ。ミラクルガールになったことで、頑丈さはかなり上昇しているが、それ以外はそこまで強化されていない。それがこのヴァルゴの鍵だからで、他の鍵を使えば武器が出現したり、攻撃力が増えたりするのかもしれない。一応、まだ力を得ていない空の鍵を持ってはいるが、使用はできないのだ
「風よ。ウィンドカッター!」
彼女の正面に薄緑色の風の刃が生成される。その刃が、接近していた相手に向かって刃を打ち付けようとした。しかし、相手はその魔法を防御することも避けることもなくその刃を受けた。魔法が消えたわけでもないのだが、相手の体には傷一つ着いていない。それもそのはずで、この世界の魔法は威力の低い魔法は物理的な干渉を行わない。体内の魔気を消費させるのだ。魔気とは、この世界の空間に満ちている生物の生存に必須かつ、魔法を使うときの消費されるものだ。体内の魔気が完全に消失した場合、その生物は死ぬ。少しでも残っていれば、治癒師と言う職業の者が治療できるが、死んでしまったものは治すことは出来ない。だから、このまま威力の低い魔法を当て続けると、相手を殺すことになる。
「はっ。そんな魔法で何をしようって?」
相手の拳が再び迫る。彼女はその攻撃を見てから体を横に逸れて、攻撃を免れる。そのまま相手の腕を掴んで、くるっと相手に背を向ける方向に体を回す。それと同時に、身を低くして、相手を背中で持ち上げる。そのまま、腕を振り下ろした。相手のパンチの力が利用されて、相手の背中が地面に叩きつけられた。
「ぐ、ごはっ」
背中に大きな衝撃を受けて、口から声が漏れる。唾液が少し飛び出して、相手の口が少し汚れた。相手は立ち上がり、口元を腕で拭った。
「や、やるな。だが」
既に彼女はふらふらだ。サクラはまだ力の宿っていない鍵を取り出した。地面を蹴り相手の懐に入った。そのまま、相手に鍵を突き刺し、左に回す。抵抗感を感じたが鍵が回り、微かにロックがかかる音がした。
「はは、くそ。また負けか」
相手は笑った後、鍵が相手の体から藍色の光を吸収していた。その光を吸収し終えると鍵は金属を弾いた音と共に、相手の体から抜けた。相手の体は脱力して、倒れそうになるのをサクラが支えて、一旦地面に寝かせる。
「ふぅ。今回も勝てました」
彼女は一息ついて、手をパンパンとすり合わせた。一度伸びをして、寝かせていた相手を横抱きにして、その場から走ってどこかに移動した。最初に捕まっていた女性はその光景を最後まで見ることなく意識が途切れてしまった。彼女が次に目を覚ました時には、サクラに出会ったところから忘れていることだろう。
サクラは誰も来ない路地に移動して、ようやく変身を解除した。胸に手を当てて、心にある錠が閉まるイメージをする。次の瞬間には彼女の体は変身前に来ていたものに戻り、手元にはヴァルゴの鍵が収まっていた。
「う、ううん」
横炊きしていた女性が目を覚ます。彼女は薄目を開けて辺りを確認した。自分が少女に横抱きにされている状況を理解して、謝りながら地面に降ろされた。そして、自分の格好を見て、顔を赤くして、体を隠そうとしたが、体の方が大きく、結局はしゃがみこんでしまった。この町を狙う者たち、ゾディアックシグナルの支配から抜け出し、自分の意志が戻ってきたのだろう。
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