最強王様は非日常の世界(現代)に転移したようです
佐辺なる
第1話 王様、過去を語る
俺は生まれた時から剣術に魔法、何でもできた。そのおかげで全く苦労したことがない。生まれ変われるならば俺はまた俺に生まれ変わることを願うだろう。なぜならば俺は"最強"だからだ。
––––そんな俺、トーリ・ソバルトの話をしよう。
***
「天よりいでし、我に宿れ。リズ・スフィリア!」
ドカーーーンッッ。
大きな爆発音とともにドラゴンが消滅する。さらにもう1匹、対のドラゴンが俺に向かってくる。
「無駄だ。」
おれは手に持つ双剣でドラゴンを薙ぎ払う。
(ふ、決まった。)
ドラゴンは倒れ爆風が起こる。
「我を守れ。アズ・ク・リリア!」
魔法詠唱と共に俺と、俺の勇姿を見ていた町の一行の前にバリアが広がる。爆風は俺たちを避け通り過ぎて行く。
(これで終わりだな。最大級のモンスターも俺にかかればあっけねーな。ふ…ふふ…ふぁ〜っはっは!)
「きゃぁぁぁぁ!!あのドラゴンを倒すなんて!!」
女たちの黄色い声があがる。
そう、俺は女にもモテる。モテないわけがない。まぁそうなるよう常に自分を捏造しているわけだが。人生楽勝すぎてにやけてくる。
(あー、この歓声聞いてくれよ!きっもちいい〜。)
だらしない顔を晒しそうになるが…。俺のイメージは崩さない。
精一杯のキメ顔を作り声をかける。
「君達。大丈夫か?」
また女たちの悲鳴があがる。…最高だ。そんな中から一人。
「トーリ、さっさと次いくわよ。隣町で怪我人が増えてるらしいわ。」
と偉そうに言う女がいた。
白い肌に黒髪ストレート、サイドで少し髪を結んでいる。それに加えて、知的で勝ち気な瞳。町1番の美少女と名高いユイ・クラリス。唯一、俺になびかない女。まぁ、いわゆるあれだ。幼馴染ってやつだ。
「わーってるよ。うるせぇな。」
とまぁ、こんな感じで日々魔獣やモンスターを討伐していたわけだが。最大級モンスターであるドラゴンを倒したのは、俺がわずか10歳になったばかりの頃だった。
***
今まで誰もドラゴンを討伐したことはない。皆が一丸となり襲いくるドラゴンを撃退していたそうだ。
そのドラゴンを10歳の少年が撃退でもなく討伐したとの噂は瞬く間に広がっていった。
思えばこのあたりからだ。俺が自分で自分の事を"最強"と自覚し始めたのは。
そこからは簡単だった。弱肉強食であるこの世界。俺より強い者は誰一人としていなかった。つまり"無敵"だ。
(むふふふふ。)
っと、ところどころ素が出てしまわないよう気をつけなければ。
俺の唯一の欠点といえば、この短絡的な思考だろう。なんでも思いつきで行動だ。ユイにも言われていた。
「あんたの本質はただのバカなのよ。」
この俺にそんな言葉を投げかけるのはアイツくらいだ。
そんなこんなで順風満帆に時は経ち21歳、思いついたのは俺最強なんだからこの世界の1番になったら良くない?つまり王様だ。今思えば、こんな事を思いついたのがいけなかったのだ…。
***
そして、ユイに報告した。
「俺、王様になることにしたから。」
「あー、そう。いいんじゃない?」
って、もっと他に反応あるだろ!?仮にもこの世界の頂点に立つって言ってるのに。本当にこいつは何考えてるかわからん。
まぁ何はともあれ、現・王様にあっけなく勝利した俺はすんなりと次の王様に即位したのであった。町の皆も両親も大喜び、その日は一日中祭り騒ぎだった。この時俺は、22歳であった。
***
俺は王様になったものの退屈の極みだった。玉座に座り大臣達の報告を待つ。
「ただいま戻りました。西の町での魔物"撃退"、無事に終了いたしました。」
「お主、今"撃退"と言ったか??それではいつ魔物が襲ってくるか民は皆恐れたままだはないか!」
「し、しかし。」
「ええぃ!もう良い。俺が直接出向く!」
(こんなところにずっと居たら退屈すぎて何も面白くない。さてさて、久しぶりに城外にいってやろう。)
と内心はウハウハだ。大臣達は皆、俺に逆らえない。それは民衆も同じだ。俺はすっかり調子に乗っていた。なにせ、俺の一言で全てが決まり俺に逆らうものはこの世界に誰一人としていないのだから。
魔物退治といっても俺にとっては"お遊び"のようなものだ。
俺が大臣の目を盗み、城外に出ようとしている時だった。
「かの者に向かえ。イン・ザ・ファンタズムニスク。」
それは静かに響いた。
(な!?俺が聞いたことのない魔法詠唱だと!?)
そんなものが存在するはずないと後ろを振り向くが、マントで顔が覆われていて顔が見えない。
「何者だ!?」
それがこの世界で発した俺の最後の言葉だった。
***
一瞬で世界が塗り替えられるとはこの事だ。俺の目の前の世界は見たことのない光景で溢れていた。
見たことのない魔物がたくさん走っている。しかも、あの魔物人を食って捕らえている!?だと。
そう、これはある異世界の王様が現代に転移する。そんな王様にとっての非日常を描いた物語だ。
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