第6話どうなる松の湯
松の湯のシャッターに忌中の張り紙が貼ってあり、西野は肩を落とした。あの、島田のじいさんが亡くなったのか……。
西野は涙がこぼれそうであった。
「オイッスー!西野の旦那」
西条が近付いてくる。西野は右手を少しあげ、挨拶代わりにした。
「げっ!忌中。あのじいさん死んだのか」
「間違いないですね」
「松の湯はもう閉まるのかな~」
「さぁ~」
西条はまた若い衆を連れて来ていた。
「西野ちゃん、スーパー銭湯行こう。宮の湯」
「遠いよ」
「うちのハイエースで行こう」
西条のペンキ会社は松の湯から歩いて5分の場所にある。
「ちょっと、シンナー臭いけど我慢してな」
「うん」
一行は宮の湯で疲れた身体を癒した。若い衆も、うぃ~と唸る。
「君たち、彼女とかいるの?」
と、唇ピアスの男の子に聴くと、
「はい。います。僕たげじゃなくみんな彼女がいます」
「そっか~、みんなカッコいいからね」
「西野さんは、結婚してるんですか?」
西野は左手の薬指を見せた。結婚指輪を見せた。
「君らも、早く結婚しなさい」
「え~、まだ21っすよ。西野さんは何歳で結婚したんですか?」
「30」
「散々、遊んでるじゃないですか!」
「まぁね」
西条はサウナから戻ってきた。
「西野ちゃん、いつもの『赤とんぼ』で、飲まないか?明日は土曜日でしょ?」
「いいよ」
「西野ちゃんの嫁さん、優しいよな。怒った顔見たことない」
「あれは、内弁慶だから」
「どこも、一緒か?」
「君たちも、僕らを反面教師として、いい嫁さんもらうんだよ!」
「西野さん、反面教師って何なの?」
「……忘れて、忘れて。どうでもいいから」
西条さん御一行様は『赤とんぼ』に向かった。
みんな、生ビールを飲んでいる。
「西条さん、松の湯が閉めたらもう僕らそんなに会えなくなるね」
「そうだな。まぁ、たまに電話するよ」
「話し変わるけど、若い衆の彼女らも一緒に今度は飲みたいな~」
「おぉ、そうなら今から呼ぼうか?」
「急には無理でしょ?ね、みんな」
若い衆はニコニコしている。彼女を見せたいのか?
「この子ら、うちの社宅に住んでるの。まあまあ広くてね、彼女と同棲してんだ」
「え~、唇ピアス君、結婚は早いと言っていたのに、同棲してるのか?」
「はい。すいません」
「お前ら、彼女を呼べ!」
若い衆はLINEで彼女を呼んだり、電話で呼んだり。
しばらくすると、かわいらしい女の子4人来た。それぞれの彼氏の隣に座る。
西野は一応、挨拶した。彼女らは若い衆と同じで礼儀正しかった。
飲み会は深夜まで続いた。
西野が戻ると子供はとっくに寝ていた。嫁さんさんだけが、録画のテレビを見ていた。
「ただいま」
「おかえり」
「松の湯の島田さん死んじゃった」
「おじいさんだからね。うわっ、酒臭い」
「そう?」
「歯磨きして、寝なさい」
西野はちょっと嫁さんのおっぱいを触った。
「殺すぞ!てめー」
「す、すいません」
こうして、丑三つ時には2人とも寝た。
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