第4話 宇宙人にルールなんか分からない?

 佐希子はドリューンをこのまま人に合わせる訳には行かないと思い、今日から暫く泊まる予定だった友人から借りた別荘に連れて行く事にした。幸いこの別荘は電気ガス水道の設備も整っていて生活するには問題ない。途中スーパーに寄り食料など必要な物を買った。その間ドリューンは車の中で待たせた。もし居なくなるならそれでいい。何も宇宙人の面倒を無理にみる必要がない。だがドリューンは大人しく車の中で待っていた。本当に私だけが頼りなのだろう。仕方がない面倒見る事にした。

「ねぇドリューン、貴方の星ではドリューンと呼ばれていたの。貴方はこれから此処で暫く暮らすのよ。地球で生きて行く為には人間を理解し人間に溶け込まなくてはいけない」


「ああ、ドリューンは咄嗟に思いついた名前だ。人類には名前があると調べてあるから。佐希子の言う通りにする。これから何をすれば良いのか教えてくれ」

「いいわ。処で貴方は、食事はどうするの。人間は食べて栄養を蓄え身体を保っているの」

「食べ物? 私は食べる習慣はない。元は粒子の集合体だから」

「えっしかし今は人間になったのでしょう。何も食べないと栄養失調で死んでしまうのよ」

「ふ~ん。身体が受け付けるか分からない?」

「人間は食べて飲んで生きて行くの。それと食べるのは楽しみでもあるのよ」

「楽しみ? 楽しみとは何のこと」

「もう一から説明するのは大変だわ。人間には喜怒哀楽というモノあるの。ドリューンは意志と言うものはないの」

「まてまて、佐希子の言っている事は理解し難い。まず食べる事と喜怒哀楽について調べて見よう」

「ええ人間になるのだから、なんでも吸収してね。私は二階を掃除してくるからね」


 佐希子が二階に行って居る間にドリューンはまたパソコンのような物を取り出し何やら調べ始めた。例によって空中に絵や文字が浮かび上がる。それから色んな食べ物が浮かび、その料理に手を伸ばして、なんと料理を取り出しではないか。次から次と料理を取り出し二十種類をテーブルに並べた。

「あれ~なんかいい匂いして来たね。出前でも頼んだ……んな訳ないよね。出前の仕方も分からないのに」

 佐希子が下に降りて来ると沢山の料理が並べられていた。それをドリューンは試食を始めた。

「なっ! なにこの料理どこから来たの。いつの間に出前の取り方を覚えたの」

「嗚呼、佐希子。確かに食べると美味しいね。これが食べる楽しみか」

 佐希子は茫然と立ち尽くし料理を眺めた。驚く佐希子を気にする事もなく次々と食べ続けて居る。


「一体どうなっているの? ドリューン。もう食べられるようになったの。ねぇこの料理は何処から来たの」

 ドリューンは食べるのに夢中になっていたが、やっと驚く佐希子に微笑んだ。

「ああこれは、あの機械から出したんだよ」

「あのパソコンのようなもので」

「そうだよ。必要なら他にも取り出しみようか」

「駄目よ。そんなズルしては人間社会にはルールというものがあるの。苦労しないで手に入れるのもルール違反。人間は働いてお金を手に入れて、そのお金で物を買ったり食べたり遊んだりするの」


つづく

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