Tall girl record

Rod-ルーズ

第1話 Tall girl record

『好きです!私と付き合ってください!!」


『雨野さん、、、ごめん付き合えない。雨野さんは嫌いじゃないんだけどさ』


また振られた。

ふとした時に私は誰からも愛されていないんじゃないかって思ってしまう。


小学生の時までは、みんなと同じ背丈だった。女の子とも普通に遊んでたし、好きな男子の話だってしていた。けれど中学生を最後に、私は普通の女子とは違った道を歩むことになった。


中学生、それは誰もが通る思春期が訪れる。男子なら声変わり・背が伸びるなど男らしさが増していく。女子なら、女性特有の生理が始まったり、胸も大きくなる人は成長が進んでいくし、体格も丸みを帯びていく。


そんな成長期に私は、どんどん背丈を伸ばしていった。女子バスケに参加していたこともあり、その背丈はかなり重宝されていたが、私は周りにいる小さく可愛らしさを好きなように楽しんでいる同級生がうらやましかった。


好きな男子ができて勇気をもって告白しても皆、苦い顔を浮かべる。


『俺より背が高い人とは付き合えない』


『小さい子のほうが好きなんだ』


振られるたびに家で泣いた。振られた悲しみ以上に自分の見た目で振られるのが、とてもつらくて。

好きで背を大きくしたわけじゃない!皆が私よりも大きくなればいいじゃないか!

思い出したくない中学生時代、私にとっては毎日が暗かった


高校は好きなバスケのおかげでスポーツ推薦を利用し、都内の部活に力を入れている高校に入学することになった。

中学のセーラー服とは違って、深めの青色を使ったスカートのブレザー。


友達は『足がすらっと出てかっこいいよ!』なんて言っていたけれども、何とも言えなかったのを思い出す。


(可愛いって言われたいだよね、、、最後に可愛いって言われたのっていつだっけ?)


『カッコいい!』なんて言われ続けたせいか、自分が可愛いを言われていた事すら忘れてしまう。

嫌われていないだけマシとすら思えてしまうほど気持ちが沈むも、春満開の外に私は歩いていった。


「雨野貴音です。見て分かる通りですけど、中学の時はバスケをやってました。センターです、よろしくお願いします」


自己紹介は慣れた、どうせ背の高い事を弄られるのだから。私の好きなアーティストとか趣味なんてそっちのけで身長に目がいくのだったら始めから言った方がはやい。


『めっちゃ背が高いな…』


『クラスで一番高くね?てか、男やん笑笑』


『カッコいいなぁ〜、私、告白しようかな』


なんてヒソヒソ話しが耳に聞こえる。聞こえてないフリをしつつ、自己紹介は流れていった。


休み時間になると、すぐにクラスメイトはやってきた。女子特有のグループ作成の為だろう、ギャルっぽい連中は既に4〜5人のグループを作っている。


「雨野さんだっけ!私、横山綾音ね!よろしく!すごく背が高いんだね〜、バスケも上手かったの?」


「よろしく、横山さん。男子に比べたらそれほど高くないよ。バスケは背が高いから、やらされていた感じかな?それほど上手くないよ」


物珍し気に話掛けてくるけど、彼女自身が話す雰囲気なのか、それとも自身の低い背をうまく利用してなのか、いつもなら嫌悪感を抱くはずの話題なのに嫌な気持ちはしなかった。

私自身も、話す気もないことをスラスラと話してしまうほどに。


「なにそれ(笑)やばいね~!あっ!もう休み時間終わるじゃん!お昼またはなそ」


「うん、そうしよっか。早く席に着いたほうがいいよ」


予鈴のチャイムが鳴り、お昼まで授業が続く。四時間目が終わると始業式のせいか一斉に帰宅が始まり、私たちはカバンの中に入ったお菓子をいくつか取り出し、それを食べながら休み時間の続きを話した。


「そっかぁ~貴音は、引き続きバスケ部に入る感じなのね~あれだったら一緒にテニス部に入ろうかなって思っていたんだけど」


「スポーツ推薦なんだからしょうがないじゃん。なんだったら、綾がバスケ部に入れば??」


「背の低い私にとっては地獄みたいなスポーツだよ、、、(笑)」


入学して早々、ここまで仲良くなるとは思わなかった。綾みたいな人がいて本当に良かったと思う。


「そういえば、貴音は高校生になったんだし彼氏も作るっしょ?私たちで卒業までにダブルデートしたいね!」


「・・・私に彼氏はできないよ。今までさんざん振られたからさ」


あの時の嫌な思いが蘇る、誰からも好かれないあの日常が。

恋をしたくないはずがない、今でも誰かに愛されたい感情は強く残っているが、数々の振られ続けた苦い思い出が、私を一歩踏み出せずにさせていた。


「そんなことないよ、、、きっと貴音を好きになってくれる人はいる」


「ありがとね、、、元気出たよ」


悟られないように綾に感謝を伝えが、彼氏ができるとは思えずにいた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「一時回れば、ほとんどいないね~みんな帰っちゃったね」


「静かな校舎のほうが落ち着くし、このままが続いてほしいよ」


話が盛り上がり、帰る時間はお昼を回ってしまった。互いに予定は特になかったので急ぐことはなかったが、今日初めての人との会話でここまで話し込むとは互いに思っていなかったらしく、お互いに笑った。


そうやって歩きながら話し込んでいると曲がり角で、一人の男子生徒とぶつかりそうになった。私の背が高いためか、服がこすれてしまった。


「す、すみません!だ、大丈夫ですか、、、?」


「大丈夫だよ、2人とも怪我はない?」


「大丈夫です、、、気を付けます」


先輩だろうか、背丈がほかの男子よりもだいぶ小さい。私と比べると15cmは違うだろう。少し栗毛っぽい髪色をし、ワンサイズ大きいベージュ色のカーディガンを羽織った、カッコいいよりも可愛らしいがある人。


「一年生が入学式、早々に怪我なんて縁起悪いから。それじゃあ、気をつけてね」


そう言うと、私たちとは逆方向に歩いて行った。


これが彼との初めての出会い。

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