ダンジョンジョン
teru
第1話 人はなぜダンジョンに向かうのか
昔々のこと、長きにわたる戦争を経てついに人類の統一を成し遂げたアリオン王は魔大陸への進出を宣言した。
それは人類のさらなる発展を目指すと共に、再び人類同士で争う歴史を繰り返すことがないよう人々の目を外に向ける意味もあった。
人類が魔大陸を支配する魔族の存在を知るのはそれから数年後のことであった。
「魔王様、ご報告がございます」
「フェルデンか。申してみろ」
「城塞都市ベルンにて大型船を三隻確認致しました。恐らくまた多数の人間共がこの魔大陸に乗り込んできたものと思われます」
人類が魔大陸へと進出して百年余り、人類は魔大陸の南端に城塞都市ベルンを築いた。
城塞都市ベルンは魔大陸進出の足がかりであり連日多くの人間が船で上陸していた。
「それで例の……ダンジョンはどうなっている」
「その件なのですが、悲鳴の森、霧の洞窟のダンジョンは既に人間の冒険者達によって踏破されてしまいました……」
「なんだと!?」
人類の魔大陸侵略に対して魔族達の対応はじつに消極的であった。
大規模な魔王軍は存在するものの城塞都市へ攻め入ることはせず定期的な偵察にとどめ、各地にダンジョンを作り魔大陸へやってくる人間達を誘き寄せようとしたのだ。
もちろんそれには理由がある。
「人間共は無限に湧いてくる資源だ。捕まえて奴隷にしても良い、魔物の食料にしても良い、なんなら魔物そのものに作り変えても良い、だというのになぜ肝心のダンジョンが踏破されておるのだ!」
「それがその……ダンジョン建築担当の建築士ゾーハは卓越した建築技術を持っているもののダンジョンに関する知識が欠けているようでして、やたら装飾だけ凝った一本道のダンジョンしか作れないのでございます……」
「なん……だと……」
魔大陸随一の技術を持つ建築士ゾーハはかつて魔王城の建築にも携わった伝説の建築士である。
しかし建築技術の向上のみを突き詰めた結果肝心のトラップ制作そっちのけで装飾ばかり施してしまったのである。
「今や踏破されたダンジョンは人間共の観光名所になっております。このままでは人間共を捕らえるどころかやつらのさらなる進出を許すことになってしまいます」
「くっ……どこかにおらぬのか。ダンジョンの構造に精通した者は」
「魔王様がそうおっしゃられると思いまして既に手配しております」
「おおさすがフェルデン、相変わらず気が利くな。してその者は今どこに」
「こちらに……さあ入ってくるのだ!」
フェルデンの合図で入って来た者を見て魔王は驚いた。
「に、人間ではないか!」
「お初お目にかかります魔王様! 私は不死身の冒険家、ジョン・ダンジョルノでございます!」
男は高らかにそう名乗った。
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