第1章 3 初めての出会い
ドンッ!!
激しく何かが叩きつけられ音。
「てめえっ!ふざけるなっ!!」
バシッ!!
男性の怒気を含んだ声に何かを叩くような音…。それを聞いていると私の心臓は激しく動機を打ち始めた。
間違いない…。隣の部屋で男性が誰かに暴力を振るっている。
「!」
怖いっ!!
思わず座り込んで両耳を抑えた。途端に脳裏に蘇ってくる子供の頃の記憶…。
私は小学生の頃、シングルマザーの母と2人で暮らしていた。母は男にだらしない女で、男性が側にいなければ駄目な女だった。母であるよりも、1人の女として生きたかったのだ。
年中、色々な男性を恋人にしては捨てられてきた。そしてそのうちの何人かの男の人は私にも優しくしてくれたが、ほとんどの男の人はコブ付きの私をよく思わず、理不尽な暴力を受けてきた。
私が暴力を受けている姿を母は止める事もなく、傍観しているか、時には一緒になって私に暴力を奮って来た。
何度も近所から通報を受け、児童相談所の人が家にやってきたけれども全て母や同居の男性が追い返していた。
私の身体には痣が耐えなかった。
食事も満足に与えてもらえず、服も靴も買ってもらえなかった。学校側から何度も母に連絡が入ったけれども、その度に私は家で暴力を振るわれた。
そしてついに…小学5年生の時に、酒に酔った同居中の男性に襲われそうになり…私は隙きをついて逃げ出し、自分から交番に駆け込んで…児童相談所に保護される事になった。
その後…私は18歳になるまで施設で育ち、高校を卒業して就職したのを機に一人暮らしを始め…現在も同じアパートに住んでいた。
現在も、母とは音信不通で何処に住んでいるのかも分かっていない―。
そんな辛い過去が蘇ってくる。
そして今、まさに今日引っ越してきた住人は誰かに暴力を振るっている。
バシッ!
バシッ!
再び何かを叩くような音が連続して聞こえ…ドスドスと足音が玄関へ移動していく音がした。
ガチャ
「扉の開く音…」
バタンッ!!
乱暴に扉が閉じられると、カンカンと響く足音が遠ざかっていく。
「で、出て…行った…?」
私の心臓はドクドクと早鐘を打っている。
恐らく今出ていったのは暴力を振るっていた人物だ。と言う事は…暴力を振るわれていた誰かはまだ隣の部屋に…?
どうしよう…?
暴力を振るわれていた人物は無事なのだろうか…?
その時…。
「う…うぅ…」
薄い壁1枚を隔てた隣の部屋でうめき声が聞こえた。そのうめき声はとても辛そうだった。
流石にもうこれ以上見過ごせなかった。ゴクリと息を飲むと私は玄関へ向かい、靴を履くとそっと、自分の部屋を出た。
「…」
慎重にドアから顔を出し、辺りをキョロキョロ見渡してもアパートは静まり返り、付近には人の気配はない。
「お、お邪魔…し、します…」
私は震えながらドアノブを静かに回して扉をゆっくり開けた。
「あ…」
部屋の中はひどい有様だった。山積みにされたダンボールは手つかず状態で、何処に何があるのかも分からない有様だ。
そして私は見た。
崩れ落ちたダンボールの近くで小さな男の子がうずくまって倒れている姿を。
「だ、大丈夫っ?!」
その姿を目にした途端、私はかつての自分の姿と重なり、気付けば少年の元へ駆け寄っていた。
「しっかりして!」
少年を助け起こし、驚いた。少年の身体は驚くほど痩せていて、身体のあちこちには痣が出来ていたのだ。
「何て…酷い事を…」
「だ、誰…?」
抱き上げられた少年は虚ろな目で私見ながら尋ねてきた。
「私?私の名前は南…南彩花って言うのよ」
「南…彩花…さん…?」
少年の口から私の名前が紡ぎ出される。
「うん、そうだよ…」
これが…私と少年が知り合ったきっかけとなる出来事だった―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます