第5話
「冴は、そんな難しい曲を本家越えしている時があるのよ」
「マジで!? ただ楽しく歌っているだけなんだけどなぁ」
「ネットで配信すれば、登録者も視聴数も爆上がりだと思うよ」
「そんなに!? 大袈裟だよ……」
「冴なら可能だよ! 今から始めてみたら?」
「私は動画見る専でいいよ……」
「もったいないな。じゃあ、今度のカラオケでこっそり録音して……」
「しなくていいからね」
「ちぇ」
ぷくーと頬を膨らませる萌依。こういうところは幼稚な女の子みたい。
「萌依が聴いてくれるだけで十分だから」
「本当、もったいない」
「そう思ってくれてるだけで嬉しいよ」
「話し、変えちゃうけどさ、バスケ部は何してたの?」
「今日は顧問いなかったから、皆でひたすら筋トレしていたよ」
「筋トレか~きつそう」
「私のオススメ本から抜粋して筋トレしてたんだよ!」
「どういう本?」
「これ!!」
部活の時のテンションで鞄から本2冊を取り出し、自重筋トレ本と囚人筋トレ本を
萌依に見せた。
「……ナニコレ」
「いや、だから表紙にも書いてある通り、自重筋トレ本と囚人筋トレ本だって!!」
「一般の女子高生はこんな本見ないし買わないよ」
「そりゃそうだよ、私みたいに最強という高みを目指す高校生なんて中々いないよ。正しいフォームでやらないと効果がないから動画も見るのもオススメ」
「いや、オススメされても……文芸部には筋肉、必要最低限で良いし。読者や小説書ければ良いし」
「体育の授業で一目置かれるよ!!」
「冴は何を目指しているのよ……」
「最強。……あれ、これ部活の時にも言ったような……デジャヴ?」
「あははっ!じゃあ、悪い奴が現れたらあたしを守って?」
「もちろん! 萌依は大切な人だから指一本触れさせやしない」
「……さっきまで筋肉バカだったのに急にカッコよくならないで」
「筋肉バカ!?」
「そうだよ、筋トレが脳内を占めているもの」
「ヒーローと言って欲しいものだな!!」
「そうね、あたしのヒーロー。頼りにしているからね」
「あ、ちょうど駅ついたね。名残惜しいけど……また明日ね」
「また明日ね……」
萌依は駅の階段を上って行った。
あ、カラオケ行こうって話をしたのに、いつ行くという約束をしてなかった。
スマホのSNSを開き、萌依に電話を掛ける。3コール目で萌依が出た。
「もしもし、冴? どうしたの?」
「あ、萌依、今大丈夫? カラオケの話したのにいつ行くって話をしてなかったじゃん? いつにする?」
「今週の土曜日でいいんじゃない? あんま後にすると来月は中間テストがあるんだから勉強に追われているかも……」
「ソウダネ……」
「テストの存在忘れてたでしょ?」
「忘れたかった。筋トレしていたい。部活一時期なくなるのも嫌」
「もう……しょうがない恋人ね……じゃあ、成績良かったら何かご褒美あげる」
「え、本当!? じゃあ、萌依を乗せて腕立て伏せやりたい!!」
「どんなご褒美よ!! 本当しょうがないヒーローね。じゃあ、それにしてあげる。カラオケ終わったら勉強も頑張るのよ?」
「うん! カラオケ楽しみだね」
「そうね、冴の歌声楽しみだな。また、レパートリー増やしておいてね」
「歌は聴けば覚えられるからなぁ。どんなジャンルの曲聴きたい?」
「J-POPとアニソン!!」
「OK! 動画サイトで最新の聴いて覚えておく!!」
「最新のでなくてもいいよ。とにかく今、聴きたいのがJ-POPとアニソンなんだよね」
「さて、何を歌えば萌依を射止められるかな」
「恋愛ソング歌う気になってる……」
クスクス笑う萌依。
「いやいや、そうとは限らないよ? ネタ曲を歌って笑いを誘いに行くかもよ?」
「そっか、とにかく、あたしを楽しませてくれようとしてくれてるんだね、ありがとう」
「そりゃ、お試し恋人ですから! いや、友人でもこの努力は惜しまないけどね!」
「本当、仲良くなれて良かった。じゃあ、お風呂入るから、また明日ね」
「うん、また明日ね」
電話を切る。もっと話したかったけど、宿題あるし、冴のクラスも宿題が出ているしで仕方ない。とりあえず、冴も風呂に入ることにした。
「何歌えば、萌依は笑ってくれるかなぁ~。ふんふんふーん♪」
鼻歌を歌いながら入浴をする冴。頭を洗う時も、体を洗う時も萌依のことばかり考えていた。お試しでお付き合いとはいえ、意識をすると脳内が好きな人のことで占めていく。宿題なんかほっぽりだして、歌のこと考えていたいけど、ご褒美貰えるからまずは宿題頑張んなきゃ!!
冴は風呂から上がり、体をバスタオルで拭き、化粧水、乳液を顔に塗り、下着、パジャマを着た。そして、部屋に戻り、机に向かう。宿題を済ませ、寝るまでSNSを開き流行りの曲を聴いていた。
「今は、こんな曲が流行っているのかー。覚えよう」
Twitter、Tik Tokで話題になっている曲は一通り聴いた。今日は木曜日。明日、学校が終われば、もうカラオケだ。さて、そろそろ寝るか。お休みなさい。
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