高島くん 迷い摩天楼編

まめでんきゅう–ねこ

第1話 傷

大雨の日の東京都目黒区の平凡な学校の平凡な教室で大男と高島たかしまが喧嘩していた。

「おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ、ぶん殴らせろぉぉぉぉ」

「やだよ!それになんでよりによって僕なのさ」

「うるさぁぁぁぁぁい、ぶん殴らせろと言っているんだぁぁぁぁぁぁ」

「高島!逃げろ!」

誰かが叫んだ。高島ははっとし、外へ逃げた。

「俺から逃げられるとでも思ったか?

すると、高島に向けてパンチした。幸い当たらなかったが、高島は転んでしまった。

「ふ、風圧弾ふうあつだんか」

「さぁ、殴られるがいい!!!!!!」

もうおしまいだと思った高島は目を瞑った。が、大男の拳が高島の顔を当たる瞬間、何故か拳が止まった。

「あ、あれ?」

「しまった!や、ヤベェ、早く逃げなきゃ…」

もう遅かった。大男は体を動かすことができなくなった。

「こら!出火男でかお!お前またいじめかよ。今週で8回目だぞ。まだ火曜日なのに………」

先生が来た。

「す、すみません!!!!!!み、見逃して…」

「校長先生が……お呼びだ」

「え…………終わった…………」

出火男は先生に連れて行かれた。高島ははっとした。

「おい、大丈夫か?」

「まあ、なんとかね。ところでなんで出火男のパンチが止まったんだ?」

「ああ、あれは先生の能力だよ」

「え、あの先生って能力使えるの?」

「らしいよ。ってか、お前も能力使えるじゃん」

確かに高島も能力は使えるが、あまり強くなく、出火男が本当にいきなり来たため、忘れていた。

「そういえばそうだった」

冒頭で平凡と言ったが、全然平凡ではなかった。この世界では、人口の50%はなんらかの能力のうりょくを生まれつき使うことができる。能力は千差万別なので、例え親子だとしても同じ能力は無い。

「おい、怪我してるぞ?」

「本当だ。保健室行ってくる」



放課後、まだ雨が降っていた。

「あ、傘忘れた。まあいいか」

傘を忘れた高島は雨に濡れてしまったが、あまり気にしなかった。

「早く家に帰ってテレビ見よ!」


家に着いたが誰もいない。リビングのテーブルに置き手紙があった。

「今日は遅くなるのでシチュー食べておいてね」

手紙に書いてある通り、キッチンにシチューがあった。高島はテレビを見ながら食べたが、何故か食べた気がしない。量は多いはずなのに。

仕方なく高島は野菜炒めを作ろうとした。包丁で野菜を切っていたら、なんと指を切ってしまった。

「痛えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

あまりの痛さに飛び上がって、天井に頭をぶつけてしまった。

「痛えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!(2回目)」

絆創膏ばんそうこうを大急ぎで探していると、突然上から虫が降ってきた。

「な、なんだ?虫が降ってきた」

なんの虫か確認しようとよく見てみると、なんとゴキブリだった。しかも結構大きな奴!

「………ギャアァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!」

反射的に飛び上がって、後ろのタンスに背中をぶつけてしまった。

「痛えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!(3回目)」

暴れながら絆創膏を取り、指に貼ろうとしたら、なんと傷は治っていた。

「な、ナンデダァァァァァァァ!!!!!!」

衝撃的な展開に思わず後ろに倒れてしまったが、やはりタンスに頭をぶつけてしまった。

「痛えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!(4回目)」


少し落ち着いて、指をよく見てみると、本当に治っていた。

「な、なんでよ……」

気味が悪く感じた高島は、考えることを諦め、寝た。簡単に言えば現実逃避ゲンジツトウヒである。

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