浮気の残り香『解決編』〜消えたその香り〜その6


「お母さん毎日勉強勉強って本当に『しつこい!うざいねん!もう消えろや!』お母さんなんて『』」


 小6の反抗期、父が仕事で忙しく母親に全く新しい構ってあげずにしたその年。俺がこの言葉を発した日、ショックで外に出た後、母さんは変わってしまった。


     〜今から数十年前〜


「海ちゃん今日から中学生だな!一杯勉強して良い企業に就職するんだぞ!」


「……うん」


 中学。私の苗字がまだ『浅後あさご』だった時のことでした。


 学生は勉強だけしていればいい、今は遊ぶべきじゃない。それだけでいい…


 ただ…それだけ…。もう幼稚園の時みたいに笑って遊ぶのは駄目だ。



 私は父の言う通り毎日勉強に時間を注いだ。毎日の活動場所は学校と塾と家の3箇所だけで、寝る、食事、お風呂やトイレの時間以外はほとんど勉強だ。



「今回のテスト浅後さんは全教科ほとんど全てで満点を取りました!皆さんも見習ってください!」

「いいですね!くれぐれも恋愛や遊びにうつつを抜かさないように!」


 時間は過ぎ、中学最初の定期テストの結果発表。私は学年で一位を取った。


 周りの生徒達は「あいつすげー!今度勉強教えてもらお!」などと言っていて褒め称えていたが私はあまり喜べなかった。


 私が小学の時まで満点を逃した時、親は二人共いつも「はぁ〜」と深い溜息をついていた。私はそれを見る度辛く、親不孝者でごめんと言いながらずっとベットで泣いていた記憶がある。


(今回も満点逃して…ごめん…)


 そう考えながら私は今日もまた机に向かって復習をし始める。そしてまた夜、涙を流しながら一人ベットに眠る。



 時間は更に進み二学期半ば、10月31日。ハロウィンのその日、私は初めて同じクラスの男子から告白を受けた。


 1年生なのにバスケ部でスタメン入りしていて、クラスでも学級長を務めている好青年。彼は女子生徒からの人気も高かった。


 頭は学年でもダントツでビリだった。


 私はそんな彼の告白を・・・断った。


「なんで?」ときょとんとした顔で聞いてきた彼に私は理由を話した。


「勉強にとって恋愛は天敵、恋愛は良い企業に就職してからでも出来る。今付き合っても結婚まで行くわけじゃないでしょ!」


 私はそう言ってその場から立ち去った。



 だが次の日、彼はまた私に告白をしに来た。


「あんた昨日振ったのにまた来たの?」


「お前が好きだからだよ!俺は何回振られてもお前に告白する!お前がOKと言うまではな!」


 その言葉を聞いて私は思った…


(こいつ気持悪いな)



 そしてそれから毎日私は彼を振った。ただ一週間経っても終わらない事でいい加減辞めてほしく彼に提案をした。


「明日の放課後予定を空けてあげる。それで私が楽しかったら付き合ってあげる、楽しくなかったらもう関わんないで!」


 それを聞いて彼は「うん!」と言い嬉しさで飛び跳ねていた。


(まぁ・・・どうせ振るけどね…)



次の日


「浅後さんと一緒に居て楽しかったなぁー」


 この日、私は親に学校の図書室で勉強すると言って彼と放課後デートすることにした。


 田舎だからあまり遊ぶとこはないが、決して遊ぶ所が無い訳ではない。


 彼は私をカラオケと公園に連れて行ってくれた。


 初めてのカラオケ、デンモクの使い方が分からない私に彼は優しく教えてくれた。


 私は歌うのが恥ずかしかったが彼はデンモクでボイスエフェクトで私の声をゾンビ声とかに変えられた。


 彼はずっと笑っていた。私はそれがおかしくて釣られて一緒に笑った。久しぶりに幸せを感じた。


 公園で彼は面白い話で盛り上げてくれた。


 そして私は子供の頃に戻ったように遊具で遊んだり鬼ごっこをしたり走り回ったりしていた。


 とても楽しかった。幸せだった。親とも…こうしたかった。


 帰る頃に私はまた彼とこうして遊びだい。親とこんなことできない今までの人生、彼と一緒に色んな楽しい事をしよう。そう思ってしまっていた。


 彼は私に最後の告白をして私はそれを・・・・・・受け入れた。


 初めは振るつもりだったのに…


 彼は私の手を握り『』と言った。



 それから学校がある日は毎日かれと放課後色んな所に行ったりした。


 井の中の蛙だった私をすくい上げてくれた。


 カラオケだけじゃなくボウリング、この地域に一つしかないショッピングモールにも一緒に行った。


 ショッピングモールは昔何度か来ていたがそれは全部文具や参考書を買うためで、服屋や映画館、ゲーセンとか行ったことない所に彼は連れて行ってくれた。


 そして最後は私の家の近くの公園のブランコで二人座って雑談をしていた。


 彼は私に会うたび「大好き」って言ってくれていた。初めは照れ臭かったがいつの間にか言われるたび私も「大好き」と言い返すようになった。それ程彼のことが好きになっていた。


 私は小学校の6年間の暗闇を彼と埋めていった。こんなに幸せなことは始めてだ。


 不満はない…ないけど


 ただ付き合ってから一つだけちょっとおかしいと思ったことがある。


 私が初めて彼の事を「好き」と言った時のことだ。その言葉を聞いた後、私は直ぐに彼の家に招待された。


「まだ早いんじゃない」と言ったが彼は「皆そうだよ」と言ってきた。何も分からない私はその言葉を聞いて彼に付いていった。


そして…


 彼と体を重ねた。


 初めては痛かったが彼は私に優しくしてくれた。彼は慣れているような感じだった。私のために練習してきたのだろう。


 いつの間にか最初の痛みは無くなっていて、段々と気持ちよくなっていた。幸せだった。彼は私に「ずっと大好きだよ」と声をかけてくれた。


 それから頻繁に彼と体を重ねた。色んな所で体を重ねた。トイレや野外、彼の家の車の中で体を重ねた。


 そして段々と家デートなどが多くなった。体を重ねた後直ぐに家の近くの公園で雑談をする繰り返し、そんなデートだった。


 そして時間は過ぎ、ブランコがもう錆てきて、体重が重いと壊れそうになるくらい時間は過ぎた。


 そして三年生の三学期になった。定期テストがもう全部終わり残すは受験のみ。


 私の彼は頭が悪く就職することにした。


 私は彼と付き合っていながらテストでも全教科ほとんど満点だった。


 理由は親に彼と付き合っていると勘付かせたくないからだ。バレたらこの幸せは無くなるから…



 三学期のある日のこと。


 私はお婆ちゃんの葬式に出た。私はお婆ちゃんが大好き。いつも勉強を頑張っている私に美味しいお菓子を作ってくれたり、辛いことがあったりしたら頭を撫でてくれた。


 そんな人が居なくなって私は悲しくてずっと泣いていた。もう私を幸せにしてくれるのはあとは『』だけ、そう思い葬式が終わった後直ぐに彼に会いに家に行く。


 元々その日は葬式で行くつもりはないと彼には言ったがやっぱりこの傷を癒やしてくれるのは彼だけ…


だった…


 いつも相手の親にはバレないようにインターフォンを押さずに窓から彼の部屋に入っていた。


私はいつもみたいに窓を開け中を覗き込む。


そこには私の彼氏…


ともう一人の女性が裸で抱き合っていた。


 彼は私に気づき次第こう言い放った。


「ちぇっ…顔が良いしおっぱいも尻も大きいからセフレとして丁度良かったけどバレたんやったらもうお前は用済みだな…」


 私はこれが夢だったらいいと思った。


「ねぇ…この人より私の方がいいよね!私ならもっと気持ちよくしてあげるよ!この人とはそのプロレスごっことかでしょ!」

「そうだと…言ってよね…」


 私は窓から入り彼の手を握る。


「『』って言ってくれたよね!」


「お前マジ『しつこい!うざいねん!もう消えろや』お前なんか『』だよ」


 この事があってからと言うもの私は何もかもが嫌になった。


 塾には行くが全く内容が入ってこない。


 そして入試の日、試験会場に私の姿は無かった。


 その後私は親にたくさん怒られた。「どうしてこんな事になったんだ!」と呆れていた。


 晩飯の時、私は勇気を出して今までの事を打ち明けた。少しでも分かって欲しい、そう思った。


 が…両親は「どうして恋愛なんてするんだ!それは自業自得だ!もうお前はうちの娘ちゃう!出てけ!」と言い私を突き放す。


 私はそれを聞いて涙が溢れ、に涙が染み込む。イライラで手に持ったお箸を机にぶっ刺す。箸は折れ、私はそのまま荷物の支度して家を出た。



      〜今に戻る〜

 

「母さんにそんな事が…」


「本当に…わしは父失格じゃ…」


 浮気んしている母さんは悪い、浮気んしている母さんの彼氏も悪い、今まで勉強だけで幸せを与えて来なかった爺ちゃん婆ちゃんも悪い。


そして母親にそんな事を言う俺もまた悪い。



  〜母さんを嫌いって言った日〜


「あいつらはお前を見捨てたんだ!!だから捨て返せばいい…あいつから金を巻き上げて俺とになろう!」


 その人は俺の家の近くのベンチで母親にそう告げた。浮気相手からの言葉だった。


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