第242話 これから楽しくお泊まり会の予定だったのに


 曲垣まがきくんとオペラにからかわれながら僕が不満顔でベッドの上で座り直すと、ニヤニヤ笑っていたオペラが、


「そうだ、コレ預かってた」


 とポケットから何かを取り出した。


「ヨウちゃんの分のハンゴンダマ、確かに返したよ」


 僕に押し付けられたのはヨウコさんが持たされた反魂玉だった。そういえばマヤさんへの牽制に使ったきり忘れていた。


 僕は着ていたままのジャケットのポケットから残りの反魂玉を取り出す。手のひらの上には四つの反魂玉がきらりと輝いている。


 ——これを鬼火で燃やしたら、美紅みくの魂も会いにきてくれるだろうか?


 会えるとしても四回しか会えない。


 僕はまた内ポケットに入れた美紅のつのを上着の上から抑えた。その硬い感触にちょっとホッとする。


 君がここにいてくれる、そんな心地よさだ。


 そんなふうに思っていたら、曲垣くんが『鬼丸』を見ているのに気がついた。


「抜いてみる?」


「……いや、以前みたいに鎌倉時代に行く羽目になると困るからやめておく」


「え? あの時困ってたの?」


 めちゃくちゃ馴染んでいた気がするけど。


「まあ、それなりに」


 曲垣くんは『鬼丸』を手にすると僕に渡す。


「刀はきちんと扱え」


 僕がベッドの上に放り出していたのを気にしたらしい。


「そうだね」


 僕が素直に曲垣くんから受け取ると、当の『鬼丸』が嬉しそうに口を開く。


『そうじゃろう、ほんとおぬしはようわかっとる。わしのあるじはそういうところがなくてのう』


「悪かったな、気が利かない持ち主で」


『ふん、時を超える力を持つわしを、もうちっと丁寧に扱ってもバチは当たらんじゃろ?』


「まあねぇ。ほんと最初はびっくりしたよ。蔵のなかでこうやって鯉口を切っ——」


 つまり鞘から刀を抜こうとしたわけなんだけど、その瞬間、青い光がほとばしって——。


「そうそうこんなふうに青い光が……え?」


 光の向こうに驚いた顔のオペラと曲垣くんが見える。目が合った二人は僕に向かって手を伸ばしたけれど、それよりも先に僕は時を超えるために《飛んで》いた。




 つづく

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