第21話 破られた不血の誓い。

勝田台 風香の仕返しで、小岩 茂によって辱められそうになる大田 楓。

だが上手く行くわけもなかった。

非力な小岩 茂は暴れる大田 楓を抑えきれずに吹き飛ばされてしまう。

大田 楓は暴れた時に剣で腕を切ったが貞操の危機に比べたら安いもので床に血を滴らせたが気にする事なく勝田台 風香を殴り沈めると「誰か来てぇぇぇっ!!」と叫んだ。


その声で追い込まれて取り乱す小岩 茂が錯乱して剣を振り回して勝田台 風香を切り付けてしまい、更に大田 楓を狙った時に一番に乗り込んできた谷塚 龍之介の手によって制圧された。


「谷塚…くん…」

「人間嫌いの俺に言わせれば、コイツらは人語を喋るスタークと一緒だ。だから何かすると思っていて二階に居た」

谷塚は自分が一番乗りだった事を説明しながら小岩 茂の手と足を折る。

勝田台 風香は傷が深いのか大量に出血していて痛みに蹲っていた。



プラセは輸血を用意し、ストルトを連れて戻ってきた時に輸血が必要な人間が増えていて「何だコレは?」と憤慨した。


梶原 祐一から事情を聞いたプラセは門の兵士に書簡を持たせると姫とデリーツの所に向かわせた。


その時に完全に錯乱した大橋 礼那が暴挙に出ていた。


勝田台 風香の取り巻きの1人として居たが、それは虐げられて居たと言うより庇護下に置かれて居たと言う方が的確だった大橋 礼那は同じ取り巻きの谷津 彩乃をあんな形で失い、更に指示を仰ぎたいのに勝田台 風香は大田 楓を襲い、逆にやられて小岩 茂の剣で倒れてしまった。


コルポファに来て数ヶ月。

取り巻きとして勝田台 風香の指示に従い周りとロクな交流を持たなかった結果、1人取り残された自分の状況に恐怖し、更に先に打ち解けた上野 桜子からの報復を恐れた。

上野 桜子にその気は無くても大橋 礼那は自分のする事は自分もされると思っていた。

仮に溶け込めたのが大橋 礼那なら上野 桜子をイジメていただろう。


だからこそ恐怖で錯乱をした。

ストルトを見て血走った目で「今すぐ私を家に帰して!」と怒鳴りあげる大橋 礼那に「何を言う?返すわけがないだろう!転移の力は次の勇者召喚に使うのだ!」と一蹴するストルト。


ストルトは完全に大橋 礼那を見下して居て「帰せって言ってるのよ!」と怒鳴られても呆れる表情で首を横にって「ふぅ…、そんな事よりも仲間の不始末をどうするのだ?」と言った。


ストルトもまた愚かで、この不始末の責任を取らされることを考えていて、姫になんと申し開きをしようかと考えていた。

だからこそ、大橋 礼那から謝罪の一つでも引き出して姫の機嫌を取りたかった。



仲間の不始末と言われても大橋 礼那に言わせれば男共の事は関係ないし、勝田台 風香にしてみれば自分は従うだけで意見なんてできない。

だからこそ「知らない!知らない!知らない!帰して!帰してよぉぉぉ!!」と全身を振り乱しながら叫んだ。


大橋 礼那の目が血走っていて刺激するのは完全な悪手でおそらく正解は「姫に相談するから落ち着け」だがストルトはそれをしない。


「だからお前如きに転移の力を使う訳がない!」

この言葉が引き金になって「ああぁぁぁっ!」と叫んだ大橋は剣を抜いた。


剣が放つ鈍い光を見て怖気づいたストルトが「な…!?何を!」と言って距離を取ろうとするが大橋 礼那は一気に距離を詰めてきて「帰しなさい!帰すのよ!帰して!」と言って剣を向ける。


躙り寄る大橋と後ずさるストルト。

徐々に距離が詰まっていく中でストルトが周りを見て「だ…誰か助けろ!」と言った。


この言葉に「これ以上の戦力低下はいただけないんで無理っす」と豊島 一樹が言い、大塚 直人も「仮に怪我してもアンタはスタークが来たら「いいから戦え」って言いそうだし」と言う。


これがデリーツであれば皆デリーツを逃す為に手を尽くしたかも知れないがストルトにその義理はない。


大橋 礼那はもう言葉が届かずに「帰せ」だけを言いながら剣を真っ直ぐ構えてストルトに向かって歩いている。

ストルトが1歩下がると大橋 礼那が2歩前に出る。


何故なのかストルトは食堂から厨房に逃げて行きながらプラセの顔を見て「プラセ!この女を止めろ!」と声を上げる。

だがプラセは「無理だ。ここ万一で私がランク外になったら誰が表世界の面々を治療する?」と返す。


「なら門番はどうした!」

「門番には状況を知らせる書簡を持たせたから不在だ。悪いが自分で何とかしてくれ」


震えながら周りを見たストルトはセオとワオを見て「亜達よ!戦え!」と言うが、セオとワオは申し訳なさそうに「頂上人様、無理です」「私達は勇者様を止められません」と言った。


セオとワオもストルトの要求を突っぱねる。

確かに亜として虐げられて居たセオとワオは表世界の人間を傷付けようなんて思わない。


そうこうしている間に大橋 礼那も厨房に入って一触即発の距離になる。


追い詰められたストルトは包丁を手に取って「近付くと切るぞ!」と声を荒げた。

だが大橋 礼那は止まらずに「帰せ」と言いながらストルトに切り掛かった。

ストルトは大橋 礼那の素人剣を回避すると流れるように大橋 礼那に包丁を突き立ててしまった。


大橋 礼那は気絶をしたのか死んだのかその場に崩れ落ちた。


ストルトは血に染まった包丁を見て「あ…、あぁぁぁ…、そ…そんな…不血の誓いが…」と言った時、不思議なことが起きた。

それはストルトの髪色が水色から金髪に一瞬で変化をした。


それを見たプラセが梶原 祐一達に「あれがランク外になった頂上人だ」と言った。

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