第8話 全員各々の物語。
ユータレスから出てくるスターク共の進行は東の京の生徒達からすれば熾烈の一言だった。
だが他の者に言わせるとまだまだこんなもんじゃないと言われる。
だが動きは良いから誰も怪我をしていない事が凄いと言われた。
この言葉に東の京の生徒達は救われていた。
ようやく一周目が終わり、明日からは二周目になる。
凄いなと思った事はデリーツはスタークがいないタイミングでキチンと屋敷まで来て労いの言葉をかけていった事だった。
デリーツは千代田 晴輝を見て「どうかな?新型の武器は必要か?」と問う。
千代田 晴輝は「まだ考えている状況ですが宜しいですか?」と返しながら紙に書いた図面のようなものを出した。
デリーツは図面を手に取って丁寧に見ると「ほう、パチンコと呼ぶ武器の改良品だな?」と言って千代田 晴輝は「はい。三案あります。扱ってわかりましたがどうしても軸がブレてしまいます。弾の増産が難しければ命中制度と威力の底上げをお願いするしかありません」と改良武器の必要性を訴えた。
「ふむ。この半円の筒が付いたものは?」
「カタパルト型…射出機型です。ここの半円を走らせる事でブレを減らします」
「ではこちらの腕に巻き付ける形のものは?」
「これは男性用のパチンコです。全部のパーツを太く頑丈にして引く際のゴムの太さと量を倍にする事で一撃の飛距離や威力を上げます」
「最後のコレは?」
「これは弾の問題さえクリアできればすぐにでも実装したい設置型のパチンコです。迫撃砲を参考にしました。後方から大型の弾を打ち出してスタークを倒します。仮に弾の大型化が難しければ既存の弾を込められる器を用意して頂いて放ちたいです」
デリーツは熱心に図面を見て質問をして千代田 晴輝はキチンと答える。
満足そうに頷いたデリーツは「悪くない。すぐに亜共に作らせよう」と言うと帰って行く。
デリーツが帰った後で東武学園の小菅 大樹が「お前、考えていたんだな」と話しかけてきて千代田 晴輝は「ええ、聞くだけ聞いて後は放置なんて怪しまれます」と答えた。
そう、デリーツ…頂上人達の考えを見極めるための会話だったが、そこで終わらせるのはまずい。だからこそ千代田 晴輝の図面は意味を持つ。
だがそうなると別の問題が出る。荒川さくら高校の滝野川 元が「だけど今更装備が変わるのはなぁ…」と困惑の声をあげる。
千代田 晴輝は問題ないという顔で「東の京がメインで使います。そうすればリズムを崩さずに済みます」とキチンと答えた。
この回答に梶原 祐一と玉ノ井 勇太は「まあ、そう言って貰えれば助かるよ」「本当だな」と言った。
二周目は初日朝一番から一周目の2日目に相当する物量でパチンコを適当に放ってもグジュグジュに当たる状況で東の京の生徒達は死を予感した。
だが問題はそれでは無かった。
二周目の2日目がまだ翌日にある事を失念してしまっていた。
二周目の2日目、巨大なグジュグジュと共に話だけでは聞いていたブヨブヨが現れた。
確かに水まんじゅうのようなぷよぷよとした体付き。前にテレビで見たコラーゲンなんかに似ているなと板橋 京子達は思ってしまう。
「ブヨブヨに火炎弾は効きにくい、氷結弾を当てるんだ!」
そんな玉ノ井 勇太の指示に板橋 京子と並んだ江戸川 里佳子が氷結弾を放つが外れてしまう。
焦る江戸川 里佳子に荒川 愛美が「大丈夫!まだ距離もあるよ!私の弾は当たってるから里佳子はゆっくり構えて!板橋当てられるよね?」と声をかけてくる。
「当てるよ!江戸川さん!相手は大きいから適当に打っても当たるよ!落ち着いて!」
「…う…うん!」
江戸川 里佳子の弾も当たり、ブヨブヨの体表が凍り付いてくる。
ここで玉ノ井 勇太が「よし!ブヨブヨは任せる。そのまま残弾に気をつけながら弾を当てるんだ!弾が減ったら声をかけてくれ!俺達でグジュグジュ共を始末するぞ!」と指示を出す。
グジュグジュの始末が終わると金棒を構えた梶原 祐一が「んじゃ弾が勿体無いからトドメ行ってくる」と言う。
宮ノ前 桜が呆れながら「気をつけてよね?」と言うと梶原 祐一がニカっと笑って「おうよ、パパは死にませぇぇんってな!」と自分の子供が居る宮ノ前 桜のお腹を見て話しかける。
「東の京の子達の前だからって無理しすぎ」
「おお、ママさんよく見てらっしゃる!」
心配する宮ノ前 桜に梶原 祐一が軽口を叩きながら金棒を片手に走り出すと凍り付いたブヨブヨの身体に向かってフルスイングを決める。
ゴンっと言う音と共にヒビの入るブヨブヨ。
梶原 祐一が「大塚!」と声をかけると、大塚 直人は「おうよ!」と言って槍を持って走ってくる。
大塚 直人は「死ねコラァ!」と言いながら槍をブヨブヨに差し入れると「梶!もう一発頼む!」と言う。
この段階で既に振りかぶっていた梶原 祐一が槍の石突に向かってフルスイングをすると槍が全てブヨブヨの中に入りヒビは更に広かった。
「離れるぞ!」
「電撃弾打つぞ!」
梶原 祐一と大塚 直人は器用にパチンコを当てながら皆の元に戻るとブヨブヨは跡形もなく崩れ去った。
三ノ輪 彦一郎の横に居た早稲田 七海が「先生、どうですか?」と聞くと三ノ輪 彦一郎は「残なし、臭いも晴れてきたよ」と返す。
これを聞いていた玉ノ井 勇太が「皆、お疲れさん。セオが風呂沸かしてくれてるから女子から入っていいぜ」と言い、この言葉でようやく戦闘が終わった事を理解した東の京高校のメンバーが力を抜く。
目の前では玉ノ井 勇太は草加 岬から「桔梗のお風呂が嫌なの?」と詰問されていて玉ノ井 勇太は「ん…んな事ねえよ。でも桔梗はママっ子だからな」と誤魔化す。
それを見ていた姫宮 明日香が「ママっ子と言うよりセオっ子じゃない?」とツッコんで、越谷 桃子が「アンタ達帰ってから大変だよ?」とからかっていた。
東武学園組がそんな話をしている横で荒川さくら組は「大塚〜、たまには仕上げ変わってよ〜」「私も槍ダッシュしたい!」と町屋 梅子と雑司ヶ谷 萌が大塚 直人に話しかける。
大塚 直人が「危ないからダメ〜」と言ってジェスチャーをすると町屋 梅子と雑司ヶ谷 萌が「ケチ」「だからモテないんだよ」と言って笑う。
この言葉にショックを受けたリアクションの大塚 直人が「マジで!?酷え!!」と言って頭を抱えている。
それを見ていて話しかけようとしている豊島 一樹に気づいた熊野前 康平が「まあ女子共も譲って貰う気は無い話だよ」と声をかける。
豊島 一樹はこの数日で全員と一度は会話をしていて熊野前 康平を熊さんと呼んでいて、「熊さん?女子達は怖いんですか?」と聞いた。
熊野前 康平は少しトーンを落として困った顔で「違うよ」と言って今もモテないと言って笑う女子と頭を押さえて「やめろぉぉ」と言う大塚 直人を見ながら「栄町 紗栄子はブヨブヨに殺されたんだ。ちょうど今日、東の京の江戸川さんが外してたろ?栄町もデカさにビビって、しかも近くで氷結弾が残ってて足止め出来るのが栄町しか居なくて、今日もやったけどグジュグジュって取りこぼすと厄介なんだ。南北の市ヶ谷さんが死んだのは今日みたいな日にブヨブヨばかりに注力してたら取りこぼしてたグジュグジュが荒川さくらの生徒を襲ってきてそれを庇ってだからな。だからグジュグジュメインにしたら今度は栄町が…な。多い時は文句出ないけど1匹の時は大塚に殺させてやりたいんだ。まあ皆恨み満載だから譲ってもらえるなら殺したいだろうけどな」と言った。
豊島はまだ来て2週間も経っていないが南北の連中が生きていれば4年目、東武組でも3年目、全員に色んな物語りがあるんだろうなと思っていた。
その後もスターク退治は順調で、なんとか乗り切ったメンバーの前に現れたデリーツは早速試作型のパチンコを持ってきていた。
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