第8章  悲しみの哀

 ここ三日間の俺への仕打ちは、日に日にエスカレートしていた。


 靴の消失事件から、スリッパの紛失、ノートや教科書への落書き、弁当の中身の消失、スマホの紛失および、画面割れ、数えきれないほどのいじめを受けた。


 その度に、富山の魔法でなんとかしてもらっていたが、出来るものと、出来ないものはさすがの彼女でもある。


「よぉ、坂田。シャーペン貸してくれよ」


 と、俺に対する嫌がらせをしてくるクラスメイトの男子、その1が、話しかけてきた。


「ああ? なんで?」


「ちょっと、書き写したいものがあってさぁ。必要なんだよ、頼む! 貸してくれ!」


「嫌だね。自分の使えばいいだろ? お前の席、あそこなんだから、取ってくればいい話だろ?」


「別にいいだろ? 貸せって!」


 と、言いながら、机の上に置いてあった筆箱を俺から取り上げると、仲間の男子生徒達に投げる。周りの奴らで、止める奴は一人もいない。


「いい加減にしろよ。今すぐ返せ、怪我したくなかったら」


 俺の我慢も限界に達しており、立ち上がって、睨みつける。


「何言っているか、分からねぇーな。借りるだけだって、言っただろ?」


 男子生徒その1が、いい顔をしている。


 俺は、クラスメイト以外にも他のクラス、ましてや、上級生からも絡まれている。


 相手が俺だから良かったものの、こいつら、これがほかの奴らだったら、終わっていたな。特に、富山相手だったら死んでいる。


「もう、我慢できねぇ……」


 ボソッと言う。


「えっ? 何か言いましたか?」


 俺は、男子生徒その1の顔に、殴り込もうと、襲い掛かる。




「陣平君、ちょっといいかな⁉」




 と、クラスの誰もが、その声の持ち主の方へと振り向いた。


 俺の右腕は、その声と同時にピタッと止まり、彼女の方を見る。


 またしても、皐月さんが、俺の教室に来たのだ。


 我に返った俺は、表情を変え、いつものように、彼女と接している表情を見せる。

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