Ⅱ
「何かありましたか? 皐月さん」
あ、まーずい。つい、家で彼女の名前を呼ぶ癖が出てしまった。
また、周りから話し声が聞こえてくる。
「え? 今、舌の名前で呼ばなかった?」
「うそっ、そういう関係なの?」
「そうなんじゃない?」
「あいつ、藤峰先輩を!」
など、俺の耳は、嫌と言うほど、聞きなれている。
「ちょっと相談というか、放課後、付き合ってほしいんだけど、ダメかな?」
この人は、なぜ、このような爆弾発言をこんな所で言ってしまうのだろうか。
また、面倒ごとに絡まれると思うが、こっちの方を疎かにするのも良くない。
「分かりました。放課後ですね。バレー部の方はいいんですか?」
俺はインターハイ予選が近い、皐月さんに訊く。
「うん。今日は、テスト前の金曜日だから、週明けまで休みなの」
「そうだったんですか。分かりました。放課後、どこで待っておけばいいですか?」
「私がここに来るから、待っていてもらえるといいかな?」
皐月さんは笑顔でそう言った。
彼女に罪はないが、もう、どうでもいいやと思う。
「了解です。では、また、後で……」
「うん、また、後でね」
彼女は、手を振りながら、また、去っていった。
俺は、振り返り、自分の席に戻る前に奪われた筆箱を奪い返すと、そのまま、席に座った。
こちらを睨みつけてくる男子達には、もう慣れているが、次に何をされるか分からない。
とりあえず、貴重品だけは、別に持っていた方がいいな。学校が終わるまでは……。
特に午後には、体育の授業がある。おそらく、盗みを働く生徒ならこの時間帯だろう。
後は、体育で何をされるかだ。五月の体育は、バトミントン、バレー、ダンスの三つに分かれている。俺は、犬伏といた方がいいと判断したため、バトミントンを選択しておいた。ダンスは興味ないし、バレーは、集団プレイとかしないといけないから、それは無理だと、すぐに判断した。
午後の授業が始める十分前——
俺は、自ら犬伏の方に近づいた。
「犬伏、今、いいか?」
「はい、なんでしょうか?」
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