XXXIII

 葵がこちらをチラチラ、と見てくる。


「どうした? 俺の顔に何かついているのか?」


「あ、いえ……。藤峰先輩とは、どこまで進んでいるのですか?」


 なぜ、そんなことを聞くのだろうか。まぁ、別にここにいる人間なら大丈夫か。


「どこまで進んでいると言っても、昨日から住んでいる感じだからな。部屋も違うし、話もまともにしていないし、まだ、進展なしって、感じだな」


「そうですか……。それならよかったです」


 ホッとしている葵。


「陣君、まさか、いやらしい事はしていないですよねぇ?」


 今度は、声色を変えて、再び、俺に質問する。


「………。して……いない……」


 俺は思わず視線を逸らしてしまった。葵の威圧感が半端なく感じ取ったせいか、怖い。怖すぎる。


「本当……?」


 俺の方を覗き込んでくる。今まで、怒った中で、一番怖い。


「は、はい……」


 俺は葵の目を合わせることができない。最後、目を合わせてしまったら、殺される。人間の危機察知反応が俺の体と共鳴している。


「嘘……」


「え?」


「だって、陣君、私と目を合わせてくれませんよね? それに返事をするとき、なぜか、間を置いて答えていますし、これはお仕置きが必要ですよね?」


「待て! それは絶対にない……とは言い切れないが、と、富山。助けてくれ! 葵に殺される‼」


 俺は富山に助けを求めた。


「別にいいんじゃない? 二人の美少女に囲まれている時点で、それこそ罪なのよ。いいじゃない。男子より葵の方が、何十倍もいいわよ。葵、あなたに任せるわ」


 と、富山は、全てを放り投げ、葵に後の事を任せる。


「ふふふ……」


 葵の目が、対象の人物に対していたずらをするような目だった。立ち上がって、両手の指の動きが不自然そのもの。


「や、や、やめろ~!」


 俺は、そのまま、葵にされるがまま、抵抗することもできずにやられた。


 と、いうのも、実際にされたのは、思いっきり抱きついたり、その他もろもろである。

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