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と、男子生徒の右腕を掴んだ人物がいた。
「そこまでにしておきましょうか」
俺と男子生徒の仲裁に入ったのは、犬伏だった。
「犬伏……」
意外だった。こんな揉め事の仲裁に入る奴だとは思ってもいなかったからだ。
「犬伏、てめぇ! 止めるんじゃねぇ‼」
男子生徒は右腕を振り払おうとするが、犬伏の力が上回っている。
「それ以上にしておかないと、あなたの方が、後手に回りますよ。いいんですか? 私が手を放しても、放した時点であなたは、坂田さんを殴るんでしょう。それだと、結局は、あなた自身、学校側から罰を受けることになりますよ」
犬伏が言っていることは正論だ。何一つ、間違ったことは言っていない。
「それと、坂田さん。あなたもあなたです。相手を挑発しないように」
「あ、ああ……」
犬伏に注意され、俺も自分の言動を振り返る。
仕方ないだろ。ああ、しないとこっちが、調子に乗られたまま、俺が手を出していたかもしれねぇーんだから。
犬伏は男子生徒の右腕を下ろし、俺の胸元を掴んでいる左手をはがす。
ようやく、息苦しさから解放された俺は、一息入れる。
「ほら、男子、そんなところで立たれると邪魔なんだけど……。解散、解散」
と、富山も加勢してくる。
本来の富山だったら、この状況を見て、男子に対して手を出してもおかしくない性格ではあるが、今日は大人しい方である。
男子達は、富山に言われるまま、それぞれの場所に散り離れになる。
「坂田、覚えてろよ。今のお前は、ほとんどの人間を敵に回しているんだからな」
と、言い残して、殴り掛かってきた男子生徒は、自分の席に戻って行った。
「助かったよ、犬伏。あの時、お前が、止めてくれていなかったら、俺は今頃、あいつを思いっきりぶっ飛ばしていたのかもしれない」
「別にいいですよ。これぐらいの事はおおよそ、起こるだろうと思っていましたから。昨日、あなたが電話をくれた時にね……」
「そうかい。まぁ、何しろ。このまま、奴らが引き下がると思うか?」
「さぁ、どうでしょう? 僕の考えが正しければ、嫌がらせは続くと思っていた方がいいですね」
「お前たちの力で、記憶消去とかできないのか?」
「出来れば、今頃、富山さんにお願いしている所ですよ」
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