XXV

 また、寝落ちしてしまったか。さっきまでの夢は一体……。俺の妄想だったのか? そうであって欲しいくらいです。いくら、今どきの高校生だからだと言って、あんな妄想はさすがに気が引ける。


 一旦、トイレに行くとするか、寝る前にするの、忘れていたし……。


 俺はゆっくりと体を起こそうとする。だが、なぜか、体が動かない。


 あれ? なんで、動けないんだ? 金縛り……でもないし、全身が重くて上がらない。


 俺は天井を見上げたまま、動かせるのは首から上のみ、左右を確認すると、恐ろしい事に俺の脳内は、危険察知する。


 俺からして右側に、誰かがいる。暗くて誰なのかは見えないが、俺の体を腕で回して、抱き枕のように寝ている。そして、腕の部分に当たっているこの柔らかく、大きなものは、言うまでもなく人間の胸だ。もう少し、正確に言うと、女性の胸であり、服から重なる胸の感触は、この世とは思えないほどの幸せを感じる。こんな幸せがあってもいいのか、いや、よくない。


 さすがにこの感触は、栞ではないな。あいつが、そこまで成長しているような体つきではないし、俺に抱きついて寝るような、馬鹿な事はしない。


 選択肢が一つ消えたところで、残る一つとなると、皐月さんしか、この家にはいない。


「すー、すー」


 ん~。どうやら、ぐっすりと、眠っているようで、これじゃあ、起もしないような気がする。


 さて、どうする。無理やりはがすと、この後、どうなるのか分からない。


「陣……君……。もうちょっと……」


 寝ぼけているのだろうか。寝言を言っている。


 俺は、トイレに行くのを諦めて、このままの態勢で、目を閉じた。




 ジリリリリリリリリリッ!


 と、大きな音が部屋中に響き渡った。


 俺は無意識にいつものように目覚まし時計が置いてあるところに手を伸ばし、音を止める。


「ふわぁああああああああ……。ねむっ……」


 俺は体を起こすと、辺りを見渡した。まだ、脳が覚醒していないのか、頭がぼーっとしており、行動が鈍い。


「もう、朝なのか……?」


 右手に残る不思議な温もり、俺は何も考えず、そのままゆっくりと立ち上がって、部屋を出た。


 寝不足というよりかは、疲れの方が大きい。


 階段を降りるも一苦労であり、一階に降りるまでいつもの二倍かかった。

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