XIV

 ですよねぇ~。あなたと私の扱い、全然違うから当然じゃん。


「とりあえず、俺は事情とか、その他もろもろ、訊いてくるから、飯の方はよろしくな」


「あいよ。任せなさい!」


 栞はニッ、と歯を見せて、右拳を俺の胸に当てる。


 さて、母さんの情報からすると、今、分かっていることは、ソファーに座っているあの少女は、俺の通う塩海高校の生徒だという事である。


 まじまじ見ると、鍛えられた足腰、バランスの良いスタイル。これはモデル並みの体系か、スポーツ選手の二択なのではないかと思うが、前者は選択肢から消えるとして、だって、ここ、都会じゃないからね。


 それに、あの顔、どこかで見たことがあるんだよなぁ。どこで見たんだっけ。


 俺は彼女のいる場所へと歩み寄っていく。


 確かにこのロングヘアの彼女は、見たことがある。


「あの……。さっきはすみませんでした。覗こうと思って、入ったんじゃないんです。まさか、人がいるなんて思っていませんでしたから……」


 と、謝罪をしながら、俺は彼女の様子を窺う。


「い、いえ。こちらこそ、悪かったんですし、そんなに謝らないでください」


 と、彼女はそう言ってくれたのだ。


 俺は、もう一つの空いているソファーに座る。


「えっと……」


「はい!」


 彼女は、背筋をピン、と伸ばして、姿勢よく俺の方を見る。別にそこまでしなくてもいいのだが。


「母さんから聞いたんですけど……。俺と同じ高校に通っていらっしゃるとか……」


「え、あ、そうですか。塩海高校、三年二組、藤峰皐月と言います。よろしくお願いします」


 藤峰皐月? あれ? どこかで聞いたような名前。


 もしかして、今日、犬伏が調べてきた、彼女ではないだろうか。いやいや、そんな運命的な偶然なんて、あり得るわけがないだろう。突然、彼女と同居するわけではないだから。そんな、古典的な罠に引っ掛からないっつーの。


「部活は何をされていらっしゃるのですか?」


 答え合わせは怖いが、とりあえず訊いてみる。


「女子バレー部です」


 と、彼女がそう答えると、俺は頭を抱える。


 おいおい、マジかよ……。そんな事、あり得るわけ。俺は信じたくない。


 俺は自分を自分で否定する。訊き間違えかと思いたいが、そうでもないらしい。

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