XIII

 と、俺の母親は、俺の電話を受け入れていないらしい。愛されているのか、愛されていないのか、分からない。


『で、何の用?』


 一応、俺の話は聞いてもらえるらしい。


「あの、家にいるあの人は一体誰なんですかね……。僕、帰ってきたら見知らぬ少女がいるのは、あまりにも不自然すぎるのですが……。ご説明してもらえます?」


 あまりにも親子の会話ではない。


『ああ、その事ね……。あんたと同じ学校の子よ。一応、私の知り合いの娘だから、何かあったら分かっているわよね?』


「はい?」


 説明が単調すぎて、意味が分からない。だから、何? ——ってなる。


『あんた、人の話、聞いていたの?』


 母さんは、ちょっと俺に対して怒っている感じで話をしてくる。


「いや~、聞いてはいたんですけど、話が簡単すぎて、中身がサッパリと言いますか……。訳が分かりません」


 俺は、母さんに対して、もう一度聞き返すのであったが、電話の向こうから返って来るのは、ため息だけだ。


 そこまで、息子と話したくねぇーのかよ。娘はめっちゃ可愛がるくせに、下の子ができると、あれなんですかね。特に娘。可愛いんでしょうね。反抗期ないもんね。あんたには……。


『とにかく、一人、住人が増えたと思えばいいのよ。その子の事、家族だと思って、接しなさいよね! さもなければ‼』


「あー、分かりました。分かりましたよ。ったく、母親というものは高校生の息子は嫌いなんですかねぇ~」


 最後に皮肉を付け加えて言った。


『はぁ? 嫌いとかどうでもいいでしょ。もう、いい歳なんだから、親に頼るなと言いたいのよ。甘えさせてあげるのは小学生まで、以上っ!』


 と、言い残したまま、電話が切れた。


 その前に、俺、小学生の頃、母さんに甘えていたか? 身に覚えがないんだが……。栞ばかり、甘えさせていたような。と、言うよりも、栞が産まれてから、栞ばかりですよね。記憶大丈夫かな、俺。


 俺は、スマホを栞に返した。


「お母さん、なんて言ってた?」


「分からん。全てまとめれば、『仲良くしなさい』って、感じかな?」


「お母さんらしいね。お兄ちゃんへの態度」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る