「皆、考えることは同じか……。一番いいのは、車で登下校、親に送ってもらえる奴らだよな。濡れないし、面倒な事にもならないから」


「そんなことを言っても、何も変わりませんよ」


「ですよね……」


 俺達は、しっかりと雨対策をしながら、自転車で帰ることにした。


 やはり、雨というのは登下校になるとこんなにもうざったらしく思うと早く梅雨が明けてくれると助かる。


 この雨のせいか、水たまりも多くできており、道路冠水も他人ごとではない。


「大丈夫でしょうか?」


「何かあったのか?」


「いえ、雨が長く降り続くものですから、学校が休校にならなければいいのですが……」


「ああ、ここまで、強く降れば、電車も止まるだろうし、電車通の奴らは不便だよな。今も、この道路、雨のせいで水が溢れ出ているからな……」


 ちょっと、栞の事も心配になってきた。さすがに傘を差して下校しているとはいえ、この滝のように流れる雨ならどうなっているのやら。


「俺、こっちだから気を付けて帰れよ」


「はい。陣君も気を付けて帰ってくださいね」


「ああ」


 俺達は、いつもの交差点で別れると、それぞれの家に帰る。


 家路についた頃には、雨合羽を通して、制服に付いた雨で濡れていた。


 自転車を車庫に入れ、玄関の前で、雨合羽を脱ぎ、家の中に入る。


「ただいまぁ~」


 濡れた雨合羽を持ち、家の中に入った俺は、靴を脱ぎ、リビングに向かった。


「おーい、栞。これ、どうすればいい?」


「もう、お兄ちゃん。あれだけ、合羽をリビングに持ってこないでって、言っているでしょ。早く、ベランダに干してきて!」


「お、おう……」


 キッチンで料理をしていた栞が包丁を俺に向けてそう言った。


 怖っ!


 俺は、すぐに栞の言う通りに、屋根付きのベランダに向かい、ハンガーを使って、雨合羽の上下を内側に干す。


 ベランダの雨に近い外側の部分の板が濡れ、こちらに少しずつ流れ込んでいる。


 これ、干しても無駄なんじゃないのか? そう言えば、葵が臭い消しのスプレーを使った方がいいって言っていたな。あれ、どこにあるんだっけ?

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