「暴走してしまう、という事ですか?」


 犬伏の話を聞いて、葵が問う。


「そうですね。今の彼女は最初の頃の辻中さんより危なっかしい。まずは、コンタクトを取りたいところですが、相手が三年生ですからね。近づきにくいんですよね。プランは色々とありますが、僕の頭の中で想像すると、ほとんどがダメになりそうで、動けないんですよね」


「だったら、男子よりも女子が考えた方がいいってこと」


 富山が訊く。


「さぁ、仮に富山さんと辻中さんが考えたところで、最終的には坂田さんが、動かないといけないですからねぇ……。そこまでの計算なんですよね。難しいのは……。これが同級生だったら良かったのですが……」


「やっぱ、俺が切り札なのね……。だったら、勝ち目ねぇーぞ。何か、特別な恋愛ゲーム並みのイベントがない限り」


「ですよね。そこなんですよね。何かありませんかね……」


「だよなぁ……」


 どうやら、男子組は同じ意見で、ため息を漏らす。


「だらしないわね。攻略早々、諦めるんじゃないわよ。ったく、使えない男どもね」


 富山が俺達を見下す。


「仕方ないだろ? 何も策がないんだから……。今日は、もう、帰らないか? もうすぐ、下校時間だし、雨降ってるし……」


 ほとんど、まだ、やる気を出していない俺は、皆に提案する。


「陣君。彼女を見てどう思いましたか?」


 だが、葵は、俺に藤峰皐月をどう思うのか、訊いてくる。


「そうだなぁ……。資料に書いてあった通り、ありゃあ、男女に人気があるのは無理ないかもな。美人だし、その上、かっこいいし……。見てみろ、周りの女子と比べたら、ほぼ、浮いている存在と言ってもいいだろうよ」


 俺が思う彼女は、そんな感じだった。


「そうですよね。私もあんな完璧超人みたいな方がいたら、気にならないわけないですよ。でも、なんだか、嫌な感じがするんですよね……」


「それって、天使の勘か?」


「分かりません。アリエスが、共鳴しているのかは私にも……」


「なるほどねぇ」


 ま、それはそれで、嘘ではないのかもしれない。


 天使が普通、近くにいたら何かしら察知するだろうし、俺達が分からない、何かに気づきもするだろう。

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