Ⅵ
俺は富山から奪い取った資料を眺めながら、他に何が書かれてあるのか、確認する。
隣から葵が覗き込んでくる。
「へぇー、この人、文武両道が出来る人なんですね。ん? これ、一見して、普通の事しか書いてないと思ったのですが、結構、詳しいところまで書いてありますね」
「そうだな。生年月日に、星座、血液型、性格、その他もろもろ……。犬伏、こんな情報、一体、どこで集めてきたんだ?」
「さぁ? どこから集めてきたのでしょうか?」
犬伏は、笑みを浮かべながら言う。
こえ……。こいつに個人情報保護法など関係ないんじゃないか?
「それではとりあえず、彼女の事を偵察しに行きましょう」
絶対、楽しんでいるな。
「そうだな。とりあえず、遠くからでもいいから見ないと分からないよな」
俺はゆっくりと立ち上がる。
俺達四人は、バレー部が練習している体育館へと向かう事にした。
塩海高校の体育館は、一階が剣道、柔道場。二階が体育館となっており、三階とは言いにくいが、それっぽいスペースがあり、筋トレ器具が並んでおり、後、体育職員室がある。
「で、お目当ての先輩はどこにいるんだよ。どれも同じで誰が誰なのか、分からん」
俺達は、上のフロアから女子バレー部が練習している所を眺めていた。
今日のお隣は、バトミントン部らしい。
「あれじゃないの? ほら、左利きで打っている人。写真に載っている人と同じよ」
富山が右側から高く飛んでボールを打つ少女を指さす。
「あれか? あれねぇ……。あの威力、尋常じゃねぇーな」
俺はその一連の動作を見ながら言った。
「そうですね。女性のスパイクにしては、威力がありすぎます。あれは高校生離れしている、というよりかは、僕の仮定からしますと、無意識に天使の力が備わっていますね」
「なるほどね。天使の力って、そんなにホイホイと使えたりするのか? 葵の場合、ここ最近、アリエスと会ってないような気がするし、力なんて使っていないぞ。暴走化は、あの指輪で、抑えられているし……」
「無意識で自覚無しは、意外と危ないんですよね。いつか、誰かを傷つけてしまいますし、天使が仮に覚醒しているのであれば、それはそれでもっと、力の制御ができるはずなのですが……。簡単に例えるなら、コップの中には満タンな水が入っていると考えてください。そこに水をさらに足すと溢れ出てきますよね。それと同じように力が駄々洩れしているというわけです。まだ、天使化の暴走はないと思いますが、このままいくとおそらくは……」
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