俺は富山から奪い取った資料を眺めながら、他に何が書かれてあるのか、確認する。


 隣から葵が覗き込んでくる。


「へぇー、この人、文武両道が出来る人なんですね。ん? これ、一見して、普通の事しか書いてないと思ったのですが、結構、詳しいところまで書いてありますね」


「そうだな。生年月日に、星座、血液型、性格、その他もろもろ……。犬伏、こんな情報、一体、どこで集めてきたんだ?」


「さぁ? どこから集めてきたのでしょうか?」


 犬伏は、笑みを浮かべながら言う。


 こえ……。こいつに個人情報保護法など関係ないんじゃないか?


「それではとりあえず、彼女の事を偵察しに行きましょう」


 絶対、楽しんでいるな。


「そうだな。とりあえず、遠くからでもいいから見ないと分からないよな」


 俺はゆっくりと立ち上がる。


 俺達四人は、バレー部が練習している体育館へと向かう事にした。




 塩海高校の体育館は、一階が剣道、柔道場。二階が体育館となっており、三階とは言いにくいが、それっぽいスペースがあり、筋トレ器具が並んでおり、後、体育職員室がある。


「で、お目当ての先輩はどこにいるんだよ。どれも同じで誰が誰なのか、分からん」


 俺達は、上のフロアから女子バレー部が練習している所を眺めていた。


 今日のお隣は、バトミントン部らしい。


「あれじゃないの? ほら、左利きで打っている人。写真に載っている人と同じよ」


 富山が右側から高く飛んでボールを打つ少女を指さす。


「あれか? あれねぇ……。あの威力、尋常じゃねぇーな」


 俺はその一連の動作を見ながら言った。


「そうですね。女性のスパイクにしては、威力がありすぎます。あれは高校生離れしている、というよりかは、僕の仮定からしますと、無意識に天使の力が備わっていますね」


「なるほどね。天使の力って、そんなにホイホイと使えたりするのか? 葵の場合、ここ最近、アリエスと会ってないような気がするし、力なんて使っていないぞ。暴走化は、あの指輪で、抑えられているし……」


「無意識で自覚無しは、意外と危ないんですよね。いつか、誰かを傷つけてしまいますし、天使が仮に覚醒しているのであれば、それはそれでもっと、力の制御ができるはずなのですが……。簡単に例えるなら、コップの中には満タンな水が入っていると考えてください。そこに水をさらに足すと溢れ出てきますよね。それと同じように力が駄々洩れしているというわけです。まだ、天使化の暴走はないと思いますが、このままいくとおそらくは……」

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