第7章 五月雨の季節
Ⅰ
五月——
ようやく、春が終わり、ゴールデンウィークが過ぎると、梅雨本番が迫ってくる。
「どうかしたのですか?」
隣の席に座っていた葵が俺に話しかける。
「あ、いやー、もう、梅雨が始まるんだなぁ、と思って……」
「そうですね。五月といえば田植えの時期でもありますし、雨が降らないと水不足にもなりますからね。これから夏にかけて、梅雨は続きますから大変ですよね」
「そうだな。洗濯物とか、どこに干せばいいのかも困っているし、特に登下校は、雨合羽着ても、たまに制服が濡れたり、靴が濡れて、靴下を履き替えないといけないんだよなぁ」
「まぁ、それは悩みの種ですよね。私も今朝、学校に着くまで、靴下が濡れましたから」
「だよなぁ……」
俺と葵は、教室から窓の外を見た。
空は暗く曇っており、雨が降っていた。これだと、帰りも止んでいるかどうかも怪しいくらいだ。本当に雨というのは、嫌であるが、逆にこの時期だからこそ、いい事もあるのかもしれない。
五月のゴールデンウィーク終わりに、席替えがあり、俺は窓側の一番後ろの席、そして、運よく、その隣に葵が来た。
「そう言えば、今度の中間テストの事なのですが、勉強は進んでいますか?」
と、葵が訊いてきた。
ああ、確か、そんなものがあったような。完璧に忘れてた……。
「あれね。そうだよな。五教科の対策はしっかりとしないといけないよな……」
俺は視線を逸らしていった。
「あの……もしかして、私に言われるまで、すっかり忘れていたとか……」
じとー、とこちらを見つめる葵。それを苦笑いで隠し通す俺。
だが、葵はそれでも俺の方をずっと見続けくる。
そして、俺はようやく心が折れた。
「はい……。すっかり忘れておりました。これ一つも勉強をしておりません……」
俺は素直に白状した後、葵は、はぁ、とため息を漏らした。
「陣君、一応、勉強しておかないと本当に危ないですよ。と言っても、中間テストは、あと一週間しかありませんから、間に合うかどうか」
葵は、やれやれという表情をした。
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