Ⅵ
だが、それを見逃すはずがない栞は、暗い顔をして、俺に言うのだ。
「私が知らないとでも思っていたの? お兄ちゃん、言っておくけど、私に嘘は通じないよ。それにお兄ちゃんが何をしているかはまだ、知らないけど、危ない事をしているんだったら覚悟はしておいてね?」
そして、両手を重ねて、音を出す。
「はい、話はこれでおしまい。それじゃあ、私はご飯を作るから、お兄ちゃんはゆっくりしておいてね」
と、さっきとは表情を変え、笑顔で言うのだ。
立ち上がって、キッチンの方に向かった。
俺は、栞が立ち去った後、心臓に悪いほど、疲れた。
あんな表情をされると、こっちが慎重に動かないといけなくなる。怖い、の一言しかない。
やれやれ、悩み事が一つ増えたな。
もうすぐ、桜散る四月が終わる。
季節は流れ、人は成長してゆくものだ。
俺は、窓から夕日の射しこむ光を浴びながら、俺はそう思った。
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