XXIV

「陣君は、欲しい本とか、ないんですか?」


「うーん、そうだなぁ。一応、ついでだし、買おうかな?」


「それじゃあ、行きましょうか。それで、どこのコーナーに行くんですか?」


「漫画とライトノベルが売っている所がいいんだが……。新刊が出ていると思うからそれが欲しいかな?」


「漫画とライトノベルですか。でしたら、このフロアの隣ですね」


「そうだな。付き合ってくれると助かる」


「いえ、それくらい大丈夫ですよ」


 葵は嫌な顔、一つもせずに言ってくれた。普通だったら、こんなのはオタクが買うものだとか、少し引かれるところもあるが、別に気にしてないだろう。


 漫画やライトノベルが並んであるフロアに行くと、小さな子供から上は二十代、三十代くらいの人が、どの本を買うか本棚を見つめていた。


 とりあえず、新刊が置いてある場所を確認して、欲しい本がないか、探し始める。


 隣で本を興味津々に眺めていた葵が、なぜか、楽しそうにしている。


「何か、興味がある本とかあったか?」


「えっ? そうですね。小説と違って、ライトノベルというのは、こんなにもデザインがきれいなんですね。試しに中身を見てみたのですが、私が読んでいる小説とは変わらないのですが、イラスト、キャラクターですか、絵がページによって入っているのは、どう意味があるのでしょうか? 気になりますね」


 どうやら、相当沼にのめり込みそうなタイプである。


「ライトノベル、通称、ラノベ。一般に読まれる小説とは違って、漫画が小説になった感じのものだと思ってくれた方がいいぞ。ほら、イラストが所々に描いてあるだろ? それはその小説のワンシーンを描いたものなんだ。アニメ好きとか、普通の本よりもこっちの方が合っている人にお勧めできるな。ジャンルは様々あるし、今は携帯小説、ネットで本を無料で読める時代だからな。俺もたまに買ったりすることがある」


「そうなんですか。すごいですね。噂では、なんとなく聞いていたのですが、それにライトノベルって、よく見るとシリーズ物が多いですね。小説って、ほとんどが一巻完結って感じなんですが、物語を長く書いて、それをいろんな人が楽しみに待って読んでくれる。私もこういうのにも手を出してみたくなりました」


「あ、そう……。気に入ってくれて何よりで……」


 何故だろう。俺よりも葵の方が、ここの楽しみをずいぶん満喫しているような。


 とりあえず、新刊が出ていた本は確保できたことだし、支払いを済ませたいところだが、物珍しそうに次々といろんな本に触れる葵に俺は、少し待つことにした。


 お気に入りの本が見つかればいいんだが……。

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