XXV
そして、待つこと約十分。葵が、ようやく買う決心がついたのは、最近、人気になっているファンタジー系のライトノベルだ。
「それ、買ってみるのか?」
「はい。ちょっと興味があるので、とりあえず、一巻だけ買ってみようかと……」
「いいんじゃないか。それじゃあ、レジに行くか」
俺達はレジに向かい、列に並んだ後、葵を先に行かせて、次のレジが空いたところに俺は移動する。財布の中からポイントカードと千円札を取り出す。
本を袋に入れてもらい、それを受け取ってからお釣りを受け取る。
先に店の外で待っている葵を見つけ、次の場所に向かう。
時間的にも丁度お昼に近い。そろそろ、どこかで昼食を取ろうと話そうとしたら、また、電話が鳴りだす。せっかくいい雰囲気で回れているのにこんな時に一体何だろう。
「すまない。ちょっと、トイレに行ってきてもいいか?」
「はい。大丈夫ですけど……」
近くのベンチに葵と荷物を置いてきて、俺はすぐに近くの曲がり角を曲がり、スマホを取り出す。着信履歴を確認すると、また、電話の相手は犬伏からである。すぐに、折り返し電話をした。
『はい、もしもし』
「次はなんだ? また、定時連絡じゃないだろうな?」
『いえ、違いますよ。それよりも不味い事になったんですよ』
「ん? はぁ? どういう事だよ」
『善は急げ、かもしれません。とにかく、葵さんは近くにいますか?』
「いや、お前に電話を掛けるために少し離れたところのベンチで座ってもらっているが、それがどうかしたか?」
『すぐに葵さんのところに戻って、外に連れ出してください! 現在、数値を確認したところ、バイタル数値がマイナスになっているんです。このままいけば、天使化の暴走が始まります』
「はぁ⁉ なんでだ⁉ さっきまで大丈夫じゃあなかったのか? なんで、今更」
『分かりません。もしかすると、何かが足りなかったのかもしれません。僕たちもそちらに向かいますので、葵さんを外に連れて行って、人のいない場所へ‼』
犬伏の声は、予想外もしなかった焦り声だった。
「分かった。ここは俺に任せて、すぐに合流しろよ!」
そのまま電話を切って、葵の元へ向かった。
ベンチに座っていた葵の様子は、少しおかしかった。
呼吸が荒くなっている。胸の辺りを必死に抑えて、うつむいている。
「大丈夫か? どこが苦しい。ちょっと、外に行くぞ!」
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