XXII

 すると、カーテンの隙間から葵が顔だけを出した。


「あははは、お待たせして申し訳ありません。なんだか、恥ずかしいですね」


 なぜか、顔から下がカーテンの向こう側にあり、どういう反応をすればいいのか困る。


「ちょっと、恥ずかしいですけど……。待ってくださいね。すぐに見せますから」


 もじもじしながら、ようやく姿を見せる。


 黒のスカートを履いて、白の服、その上に羽織った緑の服を纏っている。


 おー、これはこれで、なかなか……。んー、なるほど。こんな感じになるのか。


「ど、どうでしょうか? あまり自信がないのですが、おかしいところとかないしゅか?」


 あ、今、噛んだ。


 それほど、葵は緊張しているのだろう。慣れていない服を着るとこうなるらしい。


「そ、そうだなぁ。うん、いいんじゃないか? 清楚系お嬢様って感じがするぞ。後、可愛い」


「ありがとうございます……」


 すぐにカーテンを閉めてしまい、照れ隠しをする葵。


「それで、その服は買うのか? 似合っていると思うんだが」


「そ、そうですね。一応、キープってことにしておきます。他のも着てみたいですから。いいでしょうか?」


「いいんじゃないか? 他にどんな服が着てみたいんだ? 例えば、ボーイッシュ系みたいな服とか、高身長のモデルが着るような服とか?」


「んー、私にズボンは合わないんですよね。何度か、小学校、中学校で履いたことがあるんですけど、なぜか、最後に行きつく先はスカートでした。でも、学校の半ズボンや長ズボンみたいな動きやすい格好は、家で着たりしますけど」


「へぇー、まぁ、でも……。一度は葵のズボン姿みてみたいけどなぁ」


「な、な、何を言っているんですか⁉ 絶対に似合いませんよ! それに私だって履いてはみたいですけど、本当に似合わないんです。やはり、スカートが一番です!」


「そうかい。本人がそう言うのであれば、強要はしない。他に似合いそうな服がないか探してみるな」


 そう言い残して、俺は葵に似合いそうな服を再び選び、それを葵に着てもらう。


 もう、これってある意味、単独のファッションショーではないか。本人を見る限り、楽しそうで何よりだけど。


 しばらくして、服も何着を着終えた後、本当に欲しいものを葵は選び、それをレジに持って行き、支払いを済ませる。


「んっ……」


 俺は右手を差し出して、葵から先程買った服の入った袋を受け取ろうとする。


 だが、葵は、右手を俺の右手に載せて、まるで犬にお手をしているようだ。

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