XXI
「そうだな。俺は試着室の外で待っているからそんなに急がなくてもいいぞ」
「分かりました。では、試着してきますね」
葵は、試着室に行くと、カーテンを閉めた。
俺は外の方で待っていると、電話が鳴りだし、ポケットからスマホを取り出して、誰からの着信か、画面を確認する。犬伏、と、名前が書かれていた。
とりあえず、電話に出る。
「はい、もしもし。何かあったのか?」
『いえいえ、現段階の途中経過を報告しようと思いまして、お電話をさせていただきました』
「あ、そういうこと。それで、その途中経過とやらはどうなっているんだ?」
どうやって調べをしているのやら。犬伏曰く、俺と葵の心拍数や好感度など、さまざまなところを全て数字化して、AIが算出しているらしい。未来の技術は、どこまで進んでいるのか、未知数ばかりで意味不明である。
『はい。それなんですが、今のところ順調に進んでおりますが、まだ、暴走化を封印するにはまだ、足りません。一時的なのですが、辻中さんの好感度がものすごく上がった時間があるのですが、その後、平均よりちょっと上まで下がっているんですよね。あ、でも、辻中さんの平均と言っても、人より高いですからご安心ください』
「あ、そう。デートの感じはこんなのでよかったのか? 自信があまりないんだが……」
『そうですねぇ。その点については僕よりも怖い人が隣でうじうじとしていますから交代いたしますね』
『誰が怖い人よ! ほら、早く代わりなさいよ!』
と、電話の向こう側で犬伏の隣で怒った声が聞こえてくる。この声の持ち主は、おそらく富山だろう。その前にこの二人しか、このデートをどこかで見ているはずだ。
『あ、もしもし! あんた達、初々すぎるのよ! 特にあんたはシャキッとしなさい。シャキッと! それじゃあ、普通のデート過ぎてみているこっちは面白くないのよ! まぁ、見ててイラっとするし、ざわざわするけど』
どうやらご満足していないらしい。いや、これはこれでいいのでは?
「あのなぁ、デートって、普通はこんな感じだろ? 普通過ぎるってなんだよ」
「陣君、一応、着てみたのですが……」
と、葵の声がカーテンの向こうから聞こえてきた。
「え、あ。ちょっと呼ばれたから切るな」
『え⁉ まだ、話し終わってなっ——』
俺はすぐに電話を切って、スマホをポケットの中に入れる。
「ああ、ここにいるぞ」
俺はすぐに返事を返した。
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