「どうかしたのか? 何か、分かったのか?」


 うーん、と考え込む犬伏に話しかけるが、俺の言葉が聞こえていないのか、言葉が返ってこない。アリエスと十二体、という言葉を聞いた途端、黙り込んだのである。


 アリエスという名は、神々の中にあったのだろうか。俺も聞いたことがない。


『ん? どうした? お前も黙り込んで考え事か?』


「あ、いや、アリエスって、初めて聞く名だけど、どこかで聞いたことあるような気がしてな。ま、気のせいだよな」


 と、俺が諦めかけていると、バンッ、と大きな音が響いた。


 音が鳴る方へ、皆が一斉に振り向くと、犬伏が突然立ち上がって、両手を机にたたきつけていた。


 何事かと思っていたが、何だか様子がおかしい。


「ちょっと分かったような気がします。あくまでも僕の仮説ですが、よろしいでしょうか?」


『構わないわよ。何が分かったかどうか、私も知りたいしね。話してちょうだい』


 アリエスは、犬伏の仮説を聞く気満々だ。


「では……。アリエスと十二体の天使について、僕の仮説を立ててみたのですが、アリエスとは、黄道十二星座の一つ、おひつじ座だと思うんです。黄道十二星座というのは、黄道が経過している十三星座のうち、へびつかい座を除いた十二の星座の事です。なお、現在では、西洋占星術において用いられる『黄道十二宮』は、星座そのものではなく、等分した黄道上の領域の事を言います。だとするならば、僕の仮説は、天使の十二体は、この黄道十二星座と無関係ではないと思うんです。確かにこれは当て付けだと思うかもしれませんが、それ以外に考えられないんです。もし、これが正しいとするならば、なぜ、天使と星座の組み合わせになるのかが、不思議なんですよね」


 また、新たな情報が出てきた。黄道十二星座とか、おひつじ座、西洋占星術など、名前だけは聞いたことある言葉ではあるが、実際に中身がどのようなのかは、知りはしない。


「アリエスは、この仮説、合っていると思うか?」


『そうね。確かに強引に結び合わせれば、否定することができないわ。もし、黄道十二星座が関係するなら急いだほうがいいのかもしれないわね』


「どういうことだ?」


『十二星座、西洋占星術が絡んでいるとするならば、いずれにしても世界は破滅するでしょうね。それにこれは、絶対に何か裏があると思うわ。ねぇ、犬伏、あなたも、そう思わない?』


「はい。僕もそう思います。これに何か裏があるとすれば、いずれ、どこかで何者かが行動を起こすと思います。今は、まだ、始まったばかりではありますが、これを知っている人間がいるとすれば、僕らの知らない何かが、まだあるかと……」


 犬伏の表情が険しくなる。

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