Ⅹ
「あのな……。あれは、その……」
ここで言い訳しても仕方がないだろう。これ以上、誤魔化しても無駄だし、正直、辻中に知られてしまっては、仕方がない。
「正直に話そう。辻中、お前の中に天使がいるだろ?」
「は、はい……。時々、私の語り掛けてくる方ですよね。姿は、私なんですが、私じゃないような気がします」
「なるほどね。辻中は、天使ともう、接触していたと……。俺と天使の話は聞いていたんだよな?」
「はい、私を幸せにするとか、不幸にしないとか言っていましたよね?」
「い、言ったかなぁ?」
「言いましたよ。私、はっきりと覚えていますので、間違いないと思います」
俺は辻中に詰め寄られて、あたふたする。確かに言った記憶はあるが、今の辻中は、ぐいぐいと俺に迫っているような気がする。
「はぁ……。そうだよ。言ったよ……。それを聞いて、お前はどう思ったんだ?」
「わ、私ですか? 私は……その……坂田君はいい人だと思います……」
「あ、ああ……」
こう見えてもちゃんと人の事を見ているんだな。辻中は、辻中なりに今まで苦しんでいたのだろう。
「でも、私には自信がありません。しっかりと、坂田君と向き合えるのか、あなたの隣にいてもいいのかも分かりません。確かに坂田君は私の天使化を抑えるための、一時的な関係でしかないのかもしれませんが……その関係が崩れてしまうのが、私にとって怖いんです」
辻中の体は震えていた。その震える体を見た俺は、どんな言葉を掛ければいいのか、考え続ける。
「辻中、お前のその悲しげな顔は見たくない。確かに俺は……ただ、辻中を助けるためだけの一時的な関係にしか思っていない。でも、もし、その関係が本物なら俺は辻中の特別な人でありたい」
何を言っているんだ、俺は? 恥ずかしいこと言っていないか? これ、絶対、明らかにプロポーズだろ⁉
でも、ここまで来たら後には引けない。やるしかない。何が何でも辻中葵という女の子を落としてみせる。
さぁ、どうする、辻中。俺は、覚悟を決める。こうなったらとことん付き合ってやる!
「いいんですか? 私みたいな人でも……。私、面倒な女ですよ。自分で言ってもおかしいですが……」
「ああ……。それでもいいさ。俺が、全て受け止めてやる」
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