Ⅲ
図書室にたどり着くと、他の学年、各クラスからの図書委員が集まっており、それぞれの席に座っていた。
俺と辻中は、後方の席に座り、図書委員の担当の先生が来るのを待つ。
一方、辻中の様子ときたら、しっかりと座っているが、まだ、体調ははっきりと良くなっていないようにも思える。
「辻中、少し水でも飲んできたらどうだ? ちょっとは楽になるかもしれないぞ」
きつそうな辻中に対して、俺は彼女にそう話しかけるが、彼女は首を横に振る。
「大丈夫です。ご心配おかけします。水は、ここに来る前に飲んできましたので大丈夫です」
「でも、さっきよりも息遣いが荒くなっているぞ」
「そうですか? 分からないですが、大丈夫だと思い……ます……」
そう言って、辻中は体を机に預けて、そのまま意識を失ったのだ。
「おい、大丈夫か? 返事しろ! おいっ!」
おいおい、マジかよ。ここで倒れられてもな。とりあえず、保健室に連れていくしかねぇ。
辻中の体を抱きかかえて、俺は、近くの生徒に担当の先生にこの事を話してもらうようにと言伝を頼んだ。
すぐに俺はこの南校舎の一階にある保健室に急いで階段を下りた。辻中の呼吸は、荒々しく、大丈夫だと言っても大丈夫そうに見えない。彼女の体から瘴気が見える。これが天使化の進行している証拠なのだろうか。あるいは、もう、彼女自身、天使になっているのではないか、と思った。
保健室にたどり着いた俺は、先生に事情を話し、彼女をベットの上で横に寝かせた。
冷たいタオルで彼女の額の上に載せて、それから、悪気はないが、彼女の制服のボタンを一つ緩めた。
「さて、とりあえず応急処置は出来たとして、一応、犬伏と富山には連絡でも入れておくか」
スマホを取り出し、連絡先を交換しておいた二人にメールで、今の状況を説明しておいた。
それから十数分後、二人は保健室に姿を現した。
「坂田さん、状況は把握しました。確かにこの瘴気は、天使化が結構進行している証拠ですね。とりあえず、応急処置を行いましょう。富山さん、頼めますか?」
「大丈夫よ。これくらいなら私の力でも抑えられることはできる。でも、あくまでも応急処置だから、次にいつ、進行が悪化するか分からないわよ」
「分かりました。そちらの方も対応を考えながら、今後について考えましょう」
犬伏は、富山との話し合いで、思っていた以上に進行が進んでいると理解したうえで、俺の方を見た。
「坂田さん、もう、これは時間がありません。仕方ないですが、彼女にも協力してもらうしかないでしょう。辻中さんには、状況を理解してもらうしかありませんね」
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