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「仕方ないじゃない。そうもしないとこっちだって、危ういし、そもそもこの世界に干渉しているだけでどうかと思うけど……。まぁ、祐一がしっかりと考えているなら私はそれに従うだけ。でも、本当にあの人はあのままの性格ですね。今回のこの人も同じなのでしょうか?」
富山は、資料を片づけながらそう言った。
「さぁ、どうだろうね。僕たちは、あの人たちがいたから今がある。でも、これが成功しなければ、僕たちの存在はない。この時代に干渉する以上、アクシデントをどう乗り越えるかでしょう。一歩ずつ、目の前の課題に取り組むとしましょう」
窓から光が差し込み、生徒たちの練習声が聞こえてきた。
× × ×
「ねぇ、お兄ちゃん」
「なんだ? 今、忙しいんだが……」
俺はリビングで犬伏から受け取った恋愛ゲームのゲームソフトを家のゲーム機本体とリビングの大きなテレビを繋いで、ゲームに集中していた。
「なんで、恋愛ゲームとかしてるの? もしかして、もう、二次元の女の子しか愛せなくなったとか……。いや、ないわー。ない、ない」
栞は、引いた表情をしながら俺を見下していた。
「ちょっと待て! 俺は別に二次元しか愛せないとか、そういうわけではない! これは……あれだ! そう、女の子と付き合うにはどうすればいいのか、そういう勉強という感じで……って、あれ? 栞? そこまで嫌な顔しなくていいんじゃないの?」
俺はちょっと、自分自身が悲しい生き物に見えた。
「いやー、ゲームと現実は違うから。理想の女の子って、そう簡単にいないからね。お兄ちゃんに彼女とかできたら、それはそれで物珍しい人がいたもんだ」
栞はせっせと夕食の準備をしながら、俺のことなどどうでもいいと思っていたに違いない。
まぁ、これはただの恋愛シミュレーションだ。女の子なんて、どうせ、栞みたいな性格ばっかりだろ。なら簡単だ。俺は、俺のままでいい。
俺は徹夜しながらこの恋愛ゲームを行けるところまでプレイし続けた。
そして、次の日——
とうとう、本番を迎えるのである。
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