Ⅺ
「分かった。じゃあ、説明するね」
犬伏は席に座り、代わりに富山が立ち上がり、犬伏から資料を預かる。
「今回のターゲットの彼女は、辻中葵さん。彼女は去年、一年一組に在籍していました。得意科目は、国語。苦手な科目はなし。運動は普通の女子の中で言うと上の中といった辺り。成績は、学年で上位に入るほどの実力ね。文武両道、何でもできる女の子。と、言ったところかしら」
富山は、次から次へと、説明をしていくたびに調べた資料をホワイトボードに貼っていく。
「つまり、この辻中という女子生徒を落とせばいいんだな」
「そうですね」
「はい。辻中さんは簡単に落とせるキャラではないし、私とは正反対の性格だからね。身長に入るのもベストかも……」
うーん、と悩み、考える富山。
「そうですね。これがあなたにとっても僕たちにとっても最初の攻略するべき相手。吉と出るか、凶と出るかは、考えない方がいいでしょう。それに彼女の性格は、自分に合った適正。自分の限界を知った上での判断能力。そして、動じない性格。いやいや、最初からラスボスみたいな存在ですね。それじゃあ、明日。まずは彼女とコンタクトを取ってみましょう」
「そうだな。話してみないと分からないからな……」
俺は犬伏から預かった荷物をできるだけカバンの中に入れ、残りは富山から紙袋をもらい、その中に入れた。
「さて、俺は帰ってもいいのか?」
ゆっくり席を立ち、荷物を持つ。
「はい。ですが、明日から放課後は、毎日ここに来てもらえますか? 一応、あなたも名前だけは文芸部の部員という事になっていますから表向きでは……ね」
この男、もう、そこの手段まで取っていたのかよ。てか、根回しが早すぎるだろ。
「そうかい。分かった。そういう事なら明日から来るよ」
「お待ちしております。ああ、そうそう。くれぐれも僕たちの正体は秘密にしておいてください。いろいろと面倒ですので」
犬伏の言葉を聞きながら、俺は部室を後にした。
時間は、お昼をとっくに過ぎており、腹の音がなる。
お腹が空いたと思いながら、帰りにコンビニによって昼飯でも買おうと思った。
「さて、これでうまくいくでしょうか? 一応、これから始まるのは分かっていましたが、今のままでは、彼女を落とせるかどうか……」
犬伏は、ちょっと悩んでいた。
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