1章 『この世界に生きるということ』
『1』
この世界への転移というのか、精神の抽出なのか。霊脈玉に触れてから始まった全ては九十九と七海の現状を変える。あれから半月が過ぎ、ある程度の人員を集めることには成功したが、二神が言ったまるでユーザーがキャラメイクしたような、そんなパッとする者は現れることはなかった。
「調理員が2人。雑務員が3人。門番が4人。とりあえずこれは募集できたのは良かったけれど…少し懐が痛いな。税収も一応は設定したけれど、それも雇った人たちで相殺される。つまり…」
「稼ぎが必要だね。従来通りなら怪異を倒して素材を売ったりすれば良さそうだけども、2人だと正直手詰まりかな」
動ける人員は2人のみ。陣営を定めるにせよ沢山の募集をかけて養う必要性がある。それならば真に強い者を雇って討伐専門として働いてもらった方が内政に尽力できるというものだ。
「現状だと…そうだな。今でも金銭的には安いが、30万で雇えるのがギリギリの範囲だし…いらないアイテム売って80万は超えたけれど、いずれジリ貧になるからな」
国力 1000
雇用 門番→5人(月15万)
調理員→2人(月6万)
雑務員→3人(月9万)
税収 月30万
陣営 なし
残金 890750円
恐らく月3万で1人雇うにせよ、それは本当にそれだけのことをしてくれるNPCなだけで、それ以外の金銭を潤すことはできない。霊脈玉に表示されていること以外にも、調理するなら食材が別途必要になるし、そうなれば残金がどんどん減っていってしまうからだ。さらに一つ懸念点が出てきた。
「霊脈玉の回復機能も使えないみたいだもんね…さすがにそれができれば襲われても全回復できるゾンビ戦法ができちゃうわけだし、二神さんも意地が悪いね」
「まぁ、現実と同じく寝たり、自然に体力は回復するから、そこは現実と準拠ってことで。あー…少し気分転換しよう」
ゴロンと倒れる九十九にくすくすと笑う七海。こんな生活も悪くはないけれど、さすがに棍を詰めると鬱屈してしまう。少しだけ2人はまったりとするが、七海が1つ提案を持ちかける。
「あ、そう言えば周りを探索してなかったね。…地図だと東に町があったけど、今は南の山脈から川が流れているね。橋が書いてあるからその先に新しいところがありそう。あとは…北には内海って書いてあるし海はあるけど、この先にも陸地がありそうだね。…それ以外だと西に魔獣の森【薄氷】ってところがあるくらいかな」
「魔獣の森はパス。正直まだまだ敵も未知数だし、山脈に行っても収穫はなさそう。となれば東の方に行って新しい場所を探すか、海に行くかだな…」
「じゃあ海に行こう!まだ新しい町とか探索しないなら、今日は海に行こうよ」
少しばかり食い気味にぐいっと近づいて来て、正直ごくりとなってしまうが、冷静に対応する。
「根拠は…?」
「息抜きしたい!」
「さいですか…」
こうして半ば強引に決められてしまったが、2人は門番に挨拶して海へと向かうことになったのだった。
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