私の彼氏はもしかして

岸亜里沙

私の彼氏はもしかして

沙織さおりは毎日が幸せでした。


大好きな彼氏と、つい最近同棲生活を始め、照れくささと、嬉しさとが混じり合いながらも、大切な人と共に充実した時間を過ごしていたのです。


そんなある日、沙織はテーブルの上に置かれた彼のケータイに目を留めました。


─きっと彼は浮気なんかしてないわよね─


彼の行動に怪しい所はありませんでしたが、沙織は大好きな彼の全てを知りたくなったのです。

彼氏のケータイを手に取ると、電源を付けま

した。


─暗証番号はきっと私の誕生日になってるはず─


0、7、2、1と入力します。

ですがエラーになり、開きません。


─なんでよ─


沙織は多少のショックを感じました。


─普通彼女の誕生日でしょ─


次に彼の誕生日を入力してみますが、これもエラーになりました。


─もしかして車のナンバーかしら?彼は車が大好きだから─


彼の愛車のインプレッサのナンバーを入力してみます。

そうするとロックが解除されました。


─私より車なのね!!─


沙織は怒髪天を突く思いでした。ですが、彼がお風呂に入っている内に、少し中身を確認してみる事にしました。

彼はInstagramやTwitterといったSNSはやっていないので、他者とのやり取りはLINEが主です。


沙織はLINEを開き、内容を確認します。


─うん。やっぱり浮気なんかしてないわ─

沙織は少しホッとしました。


最近LINEに残っていたやり取りは、男友達との車の話。会社の同僚との仕事の愚痴話。そして沙織とのやり取りくらいでした。


─良かった。一安心だわ─


そう思い、沙織は彼のケータイを置こうとしましたが、ふとGoogleのアプリを開いてみたくなりました。

検索履歴や閲覧履歴を見てみたくなったのです。


─彼はどんなサイトを見てるのかしら?─


沙織は検索エンジンをタップしてみました。

ですが出てきた検索履歴を見た時、沙織は鳥肌が立ちました。


─え?何これ?─


そこに並んでいた言葉は【殺人】【絞殺】【死後硬直】【未解決事件】【出血】【撲殺】【トリック】【刺殺】【アリバイ】などの不気味な文字。


─どういう事?彼は誰か殺そうとしてるの?それとももう誰か殺したの?それかもしかして私を?─


沙織は混乱しました。


─彼に聞くべきかしら?でもケータイを見たと言ったら、逆上して何をされるか分からないし。それこそ殺されるかも。どうしたらいいの─


沙織は震える手で彼のケータイを、そっとテーブルの上に戻しました。


*************


湯船に浸かりながら彼は、あれこれ思案していました。


「もう少し斬新なトリックにしないとダメだな。ありきたりすぎる。もっと独創的なものじゃないと」


彼は一人で呟いています。



「カクヨムのコンテスト応募締め切りは20日後だ。それまでに極上のミステリーを書き上げないとな」


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私の彼氏はもしかして 岸亜里沙 @kishiarisa

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