第13話 未来

 夜空に楕円形の青い物体が飛んでいる、中にはシルバー色の服を着た2人の男が作業していた。


上司の男が新人の部下に話した。

「業務が終了し、本部に戻る予定だが確認作業を終了してからと要請があった」


「えっ、私達2人では構造も解らないし無理ですよ」


「大丈夫、本部から確認用ロボットを転送して来た。さあ、今から作業しよう」と準備を始めた。彼らは未来の地球人だった。


 最近までは異星人が地球を管理していた。地球から出る二酸化炭素等の有害物質を収集していた。


異星人にはそれが貴重な物だったが、長い年月が過ぎると有害物質が出なくなった。

その頃には地球も発達していて異星人の管理から独立して惑星連邦に入った。


しか、異星人が過去の地球に来て歴史上の重要な人物を操作するゲームをして、地球の歴史が一時的に変わってしまう可能性が出て来た。


歴史は時間をかけ修正して元に戻るが、修正するまで大変な時間が掛かった。

惑星連邦の規則には違反していないので、事前に察知し、未然に防ぐ処置をするしか方法はなかった。そのため未来人、つまり時空パトロール隊員は過去の地球に度々飛来した。


 「作業をする前に、君は今回の業務は初めてなので説明をする。異星人のゲームの主旨は色々な国でトップになれなかった歴史上の人物を選び、その人物にシールドと情報を送り国のトップにさせる。ゲームをする競技者とそれを阻止する暗殺者がいる。2人はこのゲームの内容を開示して客に勝敗を賭けさせる」


「しかし、今まで成功したことはないので、競技者の配当はかなり多い、暗殺者の配当は少ない。2人は交互に競技者と暗殺者を繰り替えしており、賭けた点数に一定のリベートを取っているので、ゲームをすることで点数を増やしている」


「点数とはなんですか?」


「点数の事は私もはっきり分からないが、多いほど地位が高くなるようだ、ところで今回のゲームの詳細はどの程度知っている?」


「将軍が競技者で、葵が暗殺者で葵の育てたアリーナが将軍を倒してゲーム終了と聞きました」


「前回と今回のゲームの推移を説明しよう。前回のゲームは競技者に有名な戦国大名を選び、暗殺者に配下の武将を選んだ。ゲームが終了になったが、大名の宝刀は回収されず、葵の村の宝刀として祀られる事になった。私は巡回で訪れ、置き忘れた葵の村の宝刀(シールド発生機)と古文書を発見した」


「古文書には次のゲームの布石としか思えない内容が書かれてあった」


「古文書の内容が如何して分かるのですか?」部下は疑問に思い聞いた。


「そうか、君は新人だから聞いてないのか? 小動物の情報収集ロボットを放して、神社に潜ませていた。ゲームの気配のありそうな場所には放してある」


「あとゲームの規則だがシールド発生機(宝刀)は競技者と暗殺者は各1台で、それからゲームでは神の声で操れる人の数も決まっている。開示では競技者は3人で将軍と村を襲撃した男と凛だった。凛はゲームの開示ではアリーナの対抗手段だった。競技者側は凛の美形を利用し人を惹きつける臭いが出るようにしたらしい。最初の予定では葵の父親が宝刀を持って行く予定だったが、襲われて行けなくなった。だから凛の臭いは意味が無くなった。暗殺者は二人で葵と祈祷師だった」


「村の長を襲撃したのは理由があるのですか?」


「競技者が葵の父親と葵を殺してしまえばゲームが有利になると考えた。ゲームが成功すれば凄い点数が動くので襲撃させた」


「村が襲撃されるのを暗殺者は知っていたのですか?」


「知っていた、競技者には有利になり凄い点数が魅力だった。しかし、結果が分からないので状況を見るだけだった。競技者と暗殺者はゲームが開示通り終了すれば良いと考えている。同じ船に乗り情報を交換している」


「私は今回のゲームの場所・年号・主役の情報は一部開示され事前に分かっていたので、私は環境順応・成長型のアンドロイドを乳飲み子の形状にして、部族でアイラを育てさせた」


「成長型のアンドロイドは人間のように自然に成長するのですか?」


「其処まで発達していない、6歳までは自然に成長し、そのあとは回収し体を歳相応な物と交換するそれを成体まで行う」


「次に本命の部族の娘を選ぶことになった。成長型でなく戦闘型が理想なので機会を待った。残酷なようだけど、村が兵隊に襲撃された時にすでに殺されていたアリーナを選んだ。環境対応・戦闘型アンドロイドにアリーナから記憶・形状を移した。このようにしてゲームが不成功に成るように関与するのが我々の任務である」


「葵にアリーナ・アイラが選ばれない可能性もあると思いますが?」


「アリーナは事前に転生後の葵にインプットしてある。アイラは祈祷師が連れて来る事は決まっていた。ただし新型のアンドロイドを使用したのは今回が最初で成果に関する確認が行われ、今後の活用を決めるようだ。ただ異星人に知られると逆利用されるので細心の注意が必要だ」


「同じアンドロイドでもアリーナは戦闘能力が高く、アイラは上達したが戦闘を好まなかった。何か違いがあるのですか?」


「アイラは乳飲み子より大人に成長していく成長型で育った環境で性格も決まる環境順応仕様で、色々な事を習得する能力は素晴らしいが、部族で優しく育てられたアイラは戦闘の意欲が段々薄れていった。アリーナは戦闘型で戦闘を繰り返す程強くなる。体はアリーナから記憶・形状を受け継いだ時から成長しないが、致命傷を負うまで戦う短期型で回収率が多い。でも今回は宝刀に守られ不死身状態だった」


「アンドロイドは自分を人と思っているのですか?」


「今回のアンドロイドは皆自分を人と思っている」


「将軍の頭から出た気体状のものは異星人ですか?」


「今回のゲームの競技者の異星人だ、奴らは体がない、物に作業をする時は仮の体を使うが動きが鈍くて人にはかなわない。だから今回の好奇心の強い異星人の競技者は人間に乗り移る。その経験の虜になり又乗り移る。それを繰り返すので始末が悪い」


「そんな競技者の性格を案じた暗殺者の異星人が布石を打った。最初は票のため娘達を弱い暗殺者として開示したが、本当は競技者が無垢な娘のアリーナとアイラに乗り移れないことは分かっていた」


「将軍からアリーナに異星人が乗り移った時アリーナの動きが鈍くなったようですが無垢な娘だからですか?」


「異星人は出世・名誉欲・物欲が強い人に乗り移れるが、アリーナは無垢な娘設定のアンドロイドで乗り移れないのに無理に移った。それであの様な状態になった」


「それではアンドロイドの確認作業を行う。最初に回収した戦闘型(アリーナ)から始める」と話してケースの蓋を開けた。


かなり損傷は酷く両手は千切れそうで胴体も穴が開くほどだった。顔は無傷で、アリーナと分かったが、銀色だった。


蜘蛛の形をしたロボットがケースの中に入り、アリーナの体を無数の細い触角で触り始めた。


「アリーナの記憶媒体は?」上司が部下に尋ねた。


「取ってあります」


「経過をスクリーンに映して」と部下に指示した。


スクリーンにはアリーナの最初に見た顔から最後に見た顔までが写っていた。


上司は暫くスクリーン見ていた。

「変だな? 村を襲撃した男は葵と会う前にも記憶されている。その前の詳細な記憶をスクリーンに写して」と部下に指示した。


映像を見て2人は驚いた。


アリーナの両親とアリーナを殺したのはその男だった。


あのとき男に斬りかかったアリーナの気持ちが分かったような気がした。


その意識が将軍との決闘まで続いていたと考えられた。


アイラは無事に回収されたので記憶媒体を抜かれて銀色の体で立っていた。


確認作業の結果が本部に送られて回答が来た。

(アリーナは修復可能であり、重要な部分は強度のある材料で防御する事を検討する。今回は一緒にウイルス等の検査を行った、異常が無かったので帰投を許可する)


「ウイルス等の検査は毎回実施するのですか?」


「通常は実施してないが、今回ウイルスに関連する事故が発生した。事故にあったのは異星人で今回のゲームの競技者と暗殺者で船の中で有害物質が発生した。船の中に金属が落ちていた。刀の柄の先の金具で中に固形の有害物質があり、溶けて気体状になった。異星人たちは意識を失ったが、自動帰投装置で星までたどり着いた。以外と重症で復帰するまで1000年位は掛かるらしい。実は私が葵に仕掛けさせていた」


「それ位の罰は与えても良いと思います。これでゲームは暫くないから良かった」

部下は安堵したが、上司は別の異星人がゲームを始めるので我々の仕事は終わらないが暫くは平穏だろうと話した。

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