第45話
平日の対策はとりあえずできたけれど、休日は一緒に居られないわね……。何か対策を考えないと……。
そう思いながら仕事をし、お客様に魔通紙を渡している時にハッとする。そうだ、これを使えばいいんだわ。
「グレン、これを持っていてくれないかしら?」
差し出したのは半分に切り取られた魔通紙。いつもは連絡手段として使用しているけれど、その持ち主の身に何か危険なことがあれば、相手の持っている魔通紙が真っ青になり、氷のように冷たくなるという機能がある。
青くて冷たい、というのはあまり緊急のイメージがないけれど、身体に触れているものが冷たくなる、というのはかなり異質なので、そちらの方がより気づきやすいのだとか。
グレンはしばらく私が差し出した魔通紙を眺めていたけれど、ふい、と顔をそむけると「お前と通信することはない」と言って手にした本に目を落とした。
ええ、ええ。わかっていますとも。こうなることはお見通しですからね?
「唐揚げ」
「……?」
「唐揚げ1年分」
「――!?」
いつも食べる度に「これ、500ディンだからね!」と口うるさく言っていた私が、ただ魔通紙を持っているだけで1年分タダだと言い出したんだもの。そりゃあ驚くわよね。
「ね、今までのもチャラにしてあげる。だからこれ、大切に持っていてね?」
再びスっと紙を差し出すと、今度は恐る恐るといった様子で受け取った。
大丈夫よ、取って食う訳じゃないから。
「変な呪いかけてないだろうな」
「かけるわけないじゃない。そもそも私、まだ魔法使えないし」
そしてグレンが魔通紙をポケットに無造作に入れるのを見届けて、少しだけ安心する。先日、マスターにはグレンに気づかれないように「なるべく太陽が昇っているうちは、グレンに一人で行動をさせないで欲しい。なるべく人が多い場所にいて欲しい」とお願いをしてある。
もちろんマスターは訝しがっていたけれど、私の必死な様子に何か思う所があったのか、「わかった」と快諾してくれた。人が多い場所というのも、ほぼ毎週末酒場に入り浸っているから問題ないだろう、と。
正直、マスターの詳細が分からない今、手放しで彼を信じることは出来ないけれど、酒場に居れば他の人の目があるし、いざという時は魔通紙が教えてくれる。
手を借りられて信頼出来る人が少ない中でやれることは出来たはず。
後は、私の魔法について調べたほうが良いわね。もし何かが起こった時に、使えるものは多い方がいい。
図書館に行けば、何かわかるかしら……?
躓いたときは、初心に返って。
おそらく基本的なことが書かれた教科書のようなものがあると信じて、この週末はタウンハウスエリアにある図書館に向かうことにした。
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