9:鎖。
第41話 人間関係。
朝から加藤に笑われている理由は、俺が茜にキスマークをつけてもらったのを吉田にバレてしまったからだ。俺は誰にも見えないようにこの痕を隠したけど、こいつが「見せて見せて」とか廊下で暴れてたからな…。外れたボタンから見える首筋の赤い痕が、通りすがりの吉田に見られてしまったんだ。
「アハハハッ、吉田の顔見た?」
「何を…」
「お前!誰とやったんだ…!俺にも紹介してくれ!」
「まじあり得ない…。それが教師として生徒に言うことか…」
「でも、やはり二人は付き合うんだ…。予想していたけど、なんか二人だけ遠いところに行っちゃった気がする」
「いつも女の子と遊びまくる加藤には言われたくない…」
「最近はしてないぞ。それより二人お似合いだから…、あの人はもう忘れて…。もうここにいないから…」
「分かってる。もう忘れたからいいよ」
前の席でスマホをいじっていた加藤が急に立ち上がって俺の机を叩く。
「行こう」
「どこ?」
「紹介したい人がいるからさ」
「今…?」
「うん」
加藤、なんか余裕があるよな…。
もう彼女のことはすっかり忘れていつもの加藤に戻ってきたんだ…。それより紹介したい人って誰、ちょっと真剣に話してたから女のことじゃないと思うけど…。何か面白そうなことを見つけたような顔、俺はその横顔を見ながら3階にある生徒会室に向かっていた。
「生徒会室?」
「うん。ここに友達がいるからさ」
別に用もないのに生徒会室か…。
「ちょちょちょ…ちょっと待ってよ!」
「えへっ…!」
扉を開ける前に、生徒会室から飛び出してくる女の子と声を上げる男。
多分、この人が生徒会長だろう…?
「よっ!夕!相変わらず仲がいいなー。羨ましい」
「変なこと言うな…。しかも、あんな人と…仲良くなるわけないだろう!あれ?こっちは?」
「ああ、紹介してなかったよね?こっちは噂の人、うちの学校の自慢!神里柊!」
「変なこと言うな。加藤…恥ずかしいからやめろ」
「こっちは生徒会長の
「へえ…。よろしく、神里くん」
「あ…、うん。よろしく会長…」
見た目ではいい人だけど、加藤はどうして俺に生徒会長を紹介してくれたんだ…?
メガネをかけて優しい笑顔を作る会長はさりげなく俺たちを生徒会室の中に入れてくれた。なんか秘密の空間みたい、生徒会室って他の部室とか教室より余裕があってゆっくりできるような気がする。
「神里くんは…あの噂を流した人を知っている?」
あ、そっちの話だったのか…。だから、加藤がわざわざ俺を…。
「知りたいけど…。ま…、いいんだろう。別に気にしないから…」
「やはり加藤くんが言った通り、神里くんは優しい人かも。そんな噂を流した人を見逃すなんて…」
「まぁ…、こいつはいつもこうだから夕に連れてきたんだ…。はっきり言ってくれ」
なんか、俺が知らない何かをこの二人は知っているような流れだった。
他人のことはあんまり気にしていなかったから、俺に何があってもその被害が大きくなければ見逃していた。面倒臭いし、一方的な敵意を俺一人でどうにかできるわけないからなるべく関わらないように無視するだけ、無駄にエネルギーを消費したくなかった。
「写真を撮ったのはこの学校の一年生たち、入学する前に神里くんのことを知っていて、ハニーモールで二人を見たから写真を撮ったって話した」
「え…、どうしてそれが分かる…?会長すごい」
「あの日、会長も彼女とデートしてたからさ」
「それはいい!」
「へえ…、そうなんだ。先の人?」
「加藤くん、そして神里くん!うるさい!」
慌てる会長が加藤の背中を叩いていた。
二人とも仲がいいな…、会長俺の分もよろしく…加藤はたまにこうやって叩いてあげた方がいいと思うからな…。なんとなく会長のやり方にこくりと頷いてしまう。
「何納得してんだ!柊」
「うんうん…」
「まぁ…。SNSにアップロードした写真は削除するけど、問題は噂を流した人だ」
「噂…」
「心当たりはない…?」
「どうかな…、俺はそんなにいいイメージじゃないからけっこう嫌われてるかもしれない」
「それが…」
そして会長が話す時、パッと扉を開ける女の子が声を上げた。
「へいへい!ジュース買ってきたよ!」
「
「あ、そして生徒会室の前で子猫ちゃんも拾ったよ!」
「子猫…?」
その優香って呼ばれる人の後ろにはなぜか茜が隠れていた。
優香の袖を掴んで、こっちをジロジロ見ていた茜は「話しているのに、邪魔してごめんなさい」みたいな合図を送っていた。ちょっと落ち込んでるけど…、茜には先にL○NEを送ってあげた方がよかったかもな…。
「茜ちゃん…?」
「茜?」
「あ、あの…柊先輩に会いに行ったら、加藤先輩と生徒会室に行くのを見つけて…」
「この子は?」
「あ、俺の彼女。話が長くなって待たせたかもね」
「彼女ならいいよ。神里くんの隣に座って、あ、そうだ。君名前は?」
「あ、ありがとうございます!雨宮茜です…!」
今度は俺の袖を掴んでじっとしている茜。
重い雰囲気の中でじっとしている茜が可哀想に見えたのか、優香は買ってきた自分のジュースを茜に渡してさりげなく声をかけてくれた。
「はい。茜ちゃん、これあげるからね」
「ありがとうございます。先輩!」
「どういたしまして、一年にこんなに可愛い後輩もいたんだ。私の名前は
「はい!よろしくお願いします!」
そばでジュースを飲んでいる茜とこっそり手を繋いで、俺たちは先の話を続ける生徒会長の声に耳を傾けていた。
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